2021年6月21

【ITの引っ越し~持っていけば動くわけではありません

~内蔵バッテリーは手軽に交換したい~

しばらく前からM1搭載MacBookやスリム型のノートPC、Surfaceをはじめとした2in1タイプPCなど、軽量で薄型の端末に触れる機会が増えました。これらの端末は大雑把に言って、薄型の本体の内部にCPU、メモリ、SSD、バッテリー、有線/無線のネットワークインターフェースと各種コネクタなどがぎっちりと詰め込まれたハードウェアです。機種によってディスプレイやキーボードが加わる場合もありますが、おおむねこれらパーソナルコンピュータを使用するために必要なパーツが厚さ1cmを切るボディの内部に収められています。


こういった小さなボディの内部に機能を詰め込むこと自体は携帯電話やPDAなどで当たり前に行われていましたが、当時は処理速度や機能でローエンドのPCに遠く及ばない特定用途に特化した割り切りだったと思いますが、スマートフォンやタブレットといったハードウェアの普及を経て、これらの製造技術がPCにフィードバックされ、日常的な仕事の用途に十分耐える製品が登場したといえるでしょう。これらの端末は性能としては従来の一般的なボディサイズの端末と遜色ない性能を備えているものが多く、ひとつところに据え置くのではなく日常的に持ち歩くような場合に好都合で、そういった利用が主体の利用者にはうってつけの端末です。

以前も書いたことがあると思いますが、CPUやメモリその他、PCを構成するハードウェアの性能はグラフィックスや音声の制作・編集や大量で複雑な数値計算を行うような専門領域を除いたWEBブラウジング・メールその他のコミュニケーション・一般的な文書作成などの日常的な作業にはローエンドの製品でも実用に足る域に達していて、ハードウェア的に修理不能な故障にでも見舞われない限り慌てて新製品に乗り換えなくても長い期間使用に耐えるようになっています。仮に性能が不足してきた場合でも、CPU交換までとは言いませんが、メモリ増設やディスク増量・HDDをSSDに交換といった補強で補うことが可能です。

しかし、上にあげたようなタイプの軽量薄型端末の場合、薄い本体内部に各種パーツを詰め込むために従来のソケット式の取り付け方法からマザーボードに直付けされることが多く、エンドユーザーがお手軽にパーツ交換を行うことができない構造を採用し、ケースを開けるのも難しい構造が当たり前で、購入後の補強はほぼ不可能です。こういった部分は購入時に極力ハイエンドの構成を選ぶことで凌ぐことも可能ですが、決定的に残念なのは内蔵バッテリーの制約です。

スマートフォンやタブレットの登場以降の薄型ハードウェアの場合、かつてはカートリッジ式で簡単に交換可能だったバッテリーが内部に埋め込み式になり、交換が必要になった場合には本体丸ごと修理に出さなければならないものばかりになっています。加えて、こういった埋め込み式の場合、内蔵バッテリーを迂回してマザーボードに電源を供給できないため、バッテリーが劣化してしまうとACアダプタを接続していてもマザーボード側で給電できなくなってしまいます。

メーカーに修理を依頼すればバッテリーを新しいものに交換することは可能ですが、本体を丸ごと預ける必要があることに加え、製品の製造終了から一定の期間を過ぎると修理用のパーツ提供が終了して交換修理ができなくなることもあります。カートリッジ式で交換可能なタイプの場合、バッテリーを取り外した状態でもACアダプタを繋げれば電源は供給されるので、交換品が調達できなくても最悪据え置きで使用することは可能でしたが、埋め込み式の場合はこういった迂回が不可能なのでバッテリーの寿命と製品の寿命が等価といってもよいものになっています。

使い勝手が良く性能に不足がなければ購入後メモリやディスクについては交換できなくても割り切ることもできますが、製品の寿命をなかば強制的にメーカーが決めてしまうバッテリーを手軽に交換できない埋め込み式についてだけは納得がいきません。

2021年6月