2015年11月30日

【RFPコンサルタントの日常】

~プロジェクト遂行中のリスク管理は「兆し」を勘所とする~

リスク管理

リスク管理。それはプロジェクトを運営する上で重要かつ軽視しがちな項目である。未然にプロジェクト失敗のリスクを回避できる利点は大きいが、顕在化しておらず、あるいは顕在化しないかもしれないため、リスク管理に時間をかけ過ぎるのは非効率的と思ってしまう部分がある。特に小規模のプロジェクトであればなおさらであろう。

またリソースが逼迫したプロジェクトはリスク管理をないがしろにしがちである。しかし、リスクが顕在化し、プロジェクト失敗の要素になったとき、必ず後悔する。「リスク管理を徹底しておけばよかった」と。

リスクとは

そもそもリスクとは何だろうか?「危険」や「危険度」が日本語訳である。特に予測のつかない危険に対して使われる言葉である。

では、プロジェクトにおける危険とは何だろうか? 抽象化するのであれば、品質の低下、コスト増加、納期遅延の3つである。(なお、この3つにも関係性がある)では、品質の低下とは何だろうか?コスト増加とは何だろうか?納期遅延とは何だろうか?

これらの危険因子を突き詰めて考え、あらかじめ許容範囲を想定したり、予防したりすることがリスク管理である。しかし、労力がかかる。プロジェクト開始前に時間をかけてリスクを洗い出したにも関わらず、プロジェクトが始まってから、管理がおろそかになりがちである。

リスク発生の「兆し」

とはいえ、プロジェクト遂行中の忙しい時期にリスク管理に時間をかけにくいのも確かである。 正直、筆者もおろそかにしてしまったことがあるが、いくつかのプロジェクトを体験していくうちに勘所が身についた。それは「兆しを見る」ことである。

ここでいう「兆し」とは「ネガティブな印象」である。簡単な例でいえば、スタッフの表情が最近悪い、悪い情報を隠そうとする、情報を小出しにする等の印象を見てリスク管理の勘所にするのである。この兆しを中心にリスクに立ち向かう。兆しがないものは優先順位を低くする。極端なことを言えば見ない。

立ち向かう手順としては、兆しを発見し、その兆しをプロジェクトのリスクと関連付けながら深堀りし、手を打っておくことである。

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例えば、スタッフの表情がここ最近悪いという「兆し」があったとする。それは単体作業の納期遅延につながり、ひいてはプロジェクトの納期遅延リスクにつながるかもしれない。

スタッフに話を聞いてみると、作業がはかどらない。連絡待ちの状態が長く続いているから待ち時間が長く、残業時間になってようやく作業が開始できる。よって長時間拘束され体がつらい。と言う。

すぐさま、スケジュールを調整、連絡体制・手段を見直し、短期的には出社時間を遅らせることとした。

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このように「兆し」を見ることで、プロジェクト遂行中のリスクを重要なものに絞って対応することができる。

なお、「兆し」を見るノウハウは後悔や反省によって得られる。「こうしておけばよかった」という後悔の背景には「あの時わかっていたのに」という思いがないだろうか? その「あの時」に起こっていたことが「兆し」である。

もし貴社にリスク管理の標準資料があるのであれば、それは先人の後悔や反省がたくさん詰まっている。そういう風に読み解いていけば、まだ見ぬ後悔をせずに済むのかも知れない。

2015年11月