2016年9月20日

【ITの引っ越し~持っていけば動くわけではありません~】

~LAN配線徒然④~

以前(2015/12/242016/2/82016/3/22)LAN配線について記しましたが、書き漏らしたことがあったので少しばかり。

LAN配線に使用するケーブルはパッと見ただけでは判別がつきませんが、通信速度・帯域幅によっていくつかのカテゴリーに分かれています。カテゴリー5、5e、6、6eあたりが一般に入手可能なものでしょう。上位の規格は下位の規格と互換性があります。交換が容易な場所には設置するPCやネットワーク機器の通信速度に合わせた規格のケーブルを採用すれば問題ありませんが、将来より高速な機器に置き換えられることを考慮すると、床下や壁の中など気軽に交換できない部分については多少コストがかかっても上位の規格を採用しておいたほうがよいでしょう。

より高級・高速なものとしてカテゴリー7のケーブルも登場し、量販店の店頭でも見かけるようになりましたが、カテゴリー7だけは注意が必要です。見た目はたいして変わらないものですが、これは10GBイーサネット用に定められた規格で、一般のLANケーブルに使用されるRJ45とは規格が異なるGG45やTEARAという規格のコネクタを使うのが本来であることに加え、内部に使用するメタル線はすべてシールドが施されたSTPケーブルを使うなど、6e以下の規格とは異なる仕様になっています。低位のLANケーブルはシールドされていない芯線を撚り合せることでノイズ対策とするUTPケーブルを採用することで全体のコストを抑えています。店頭でカテゴリー7を謳った製品の場合、GC45に代えてRJ45のコネクタを採用した製品もあり、これなら物理的に接続することは可能ですが、本来の性能が出るかどうかは保証されずコストをかける意味がない場合が多いと思います。明確にこの規格を使用しければならないケーズ以外では手を出す必要がないでしょう。

カテゴリー4から5が一般的だった頃はケーブルをロールで、コネクタもパーツでまとめて購入して、現場に合わせて自作することで、既製品を購入するよりもコストを抑えることもありましたが、それ以上のギガビットイーサネットを想定するようになってからは、自作をすることはなくなりました。

LANケーブルは末端の外側の被膜を外して中で撚り合せて収められている8本の芯線をほどき、それぞれをコネクタ内部で順番通りに並べて工具で圧着して製作しますが、撚り合せられた芯線をほどいた部分は外部の電気的なノイズの影響を受けやすくなるため、この部分が短いことにこしたことはありません。通信速度が速くなるに従ってケーブルの上を流れる電気信号の波長が桁違いに短くなり、波長が短くなればなるほど、導線上でのノイズの影響が深刻になります。そのため、芯線をほどいた部分の長さはカテゴリーが上にいくほど短くする必要があります。また、被膜を外して裸になった芯線それぞれの長さに許容される誤差もどんどん小さくなります。芯線ごとの長さに不整合があると、終端部分で受け取る信号が揃わなくなってしまいます。波長が長ければ許容された不揃いが許容できないレベルになって正常な通信ができなくなる危険が高くなります。

このように、LAN工事のケーブル加工を日常的にやっているわけではない素人の仕事では性能を発揮できなくなる危険が高くなるため、LANにギガビットイーサネットを想定するようになってからは、信頼できるメーカー製の既製品を揃えるか、あるいは電話やネットワーク配線を専門にしている業者さんに依頼するようにしています。

2016年9月