2016年5月9日

【システム企画~情報活用力を上げる仕組み作り】

~システム企画の手順と方法(指標と目標値の設定③)~

今回は戦略マップ上のCSF(重要成功要因)の満足度を測定する指標についての第2項「2.目標値の設定」について記します。

「1.指標の有効性と妥当性」については、以前(2015/12/14)に「CSFが実現されていると言うためには、何がどれだけよくなっていればよいのか、何がどれだけよくなれば(指標の測定値が改善されれば)CSFが満たされる方向にいくのか」をみるものであると述べました。

2.目標値の設定

CSFに対する測定指標の目標値を設定する目的は以下の2つです。

・ 活動を促進すること

・ 活動結果を評価すること

人間の持つ時間とエネルギーには限りがあります。限りあるものを限りなく使うということは不可能なことであり、人間はその想像にも実行にも意欲を持てません。人間はまた、見えない状態、わからない状態には不安や不快を感じます。見えない、わからない状態とは、時間とエネルギーを限りなく消費する可能性があるということです。

目標設定時には到達点とともに期限を設定することが通常ですが、これにより、そこに達成すること、または達成しないことで、好悪いずれかの結果が出るとともに、その期間が終わり、区切りがつくということになります。どこまでやればいいのか(いいことがあるのか、いやなことを避けられるのか)がわかっていると、それがわからない時よりも、活動が促進されます。

戦略マップとバランススコアカードの重要な考え方として「あなたが測定するものが、あなたが得るものだ」「測定しないものは失われる」というものがありました。目標値の達成状況を測定するとは、以下のことを測定・評価するということです。

・目標値が達成することにより、CSFが満足されたか

・CSFが満たされることにより、戦略目標に接近/到達したか

もし、目標値が達成されたにも関わらず、上記のことが認められない場合は、その内容に応じて以下のことを行います。

>目標値の見直し・指標の見直し・CSFの見直し・戦略マップの見直し

目標値についてもう一つ言えることは、その設定が難しいということです。

CSF:適度な抽象性で表すことが難しい

目標値:具体的な数値で表すことが難しい

戦略マップは戦略目標達成に向かうときのCSFの影響関係を、シンプルで一覧性の高い形で表すものです。これは個人による理解・記憶と組織による共有を容易なものとするためです。このとき、個々のCSFを具体的に書き過ぎるとその数が増えて、上記のことを難しくするため、CSFは抽象的な言葉で表される傾向が強くなります。

抽象的に表されたCSFに対する指標の目標値を、ある事柄を根拠として一意的に決めることは容易ではありません。しかし、CSFに対する指標とその測定方法、目標値は具体的にしなければ、活動項目の決定と実行がなされません。そして、目標値実現の責任を負う部門や個人は、高い目標値を歓迎しないことがあります。

CSFから指標と測定方法までは論理的に案出することが可能ですが、目標値を決定することは思いの外、難しいものです。売上高見込みを試算する計算式を、引き合い数、成約率、平均単価等の掛け算で表すことは論理の内にあると言えますが、その先は個人の思惑と組織の政治の世界とも言える難しさがあります。

2016年5月

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※関連コラム

【システム企画~情報活用力を上げる仕組み作り】「システム企画の手順と方法(指標と目標値の設定②)」(2016年3月14日)

【システム企画~情報活用力を上げる仕組み作り】「システム企画の手順と方法(指標と目標値の設定①)」(2016年2月1日)

【システム企画~情報活用力を上げる仕組み作り】「システム企画の手順と方法(各ステップの内容④)」 (2015年12月14日)