2014年10月20日
【中小企業のIT投資は社長が仕切れ!】
~IT予算を判断するのは社長の仕事~
システム構築においてITベンダーがどのように見積もり額を算出しているかご存知ですか?日経コンピュータ2014年10月16日号に面白い記事がありました。ITベンダーに対して「あなたが関わっている案件で、採用している見積もり手法はどれか」という質問に対して、以下の回答があったとのことです(複数回答可能)。上位3つを記します。
第1位 事例類推法 64%
第2位 担当者個人による勘・経験 58%
第3位 WBS(ワーク・ブレークダウン・ストラクチャ)法 44%
事例類推法とは過去の似たような案件の見積もり金額やプロジェクト終了後の実績金額などを参考にして見積もる方法です。WBS法とは対象となるシステム構築において想定される作業を細かく洗い出し、個々の作業単位ごとに工数を見積もり、加算していく方法です。
1位の事例類推法と2位に勘・経験による算出はいわばアナログ手法による算出です。WBS法は一見科学的にみえます。確かに類推や勘よりはアプローチが論理的ですが、個々の作業単位の設定やその作業単位毎の見積もりはどうやるのかといえば、事例類推か勘・経験となるケースが多いのです。
つまりITベンダーのシステム構築に関する見積もりはほとんど営業マンや担当技術者のアナログ作業によって作られているのです。それは発注側であるユーザー企業においても同じことが言えるのです。「今度のシステム構築に対して予算をいくらとすればよいか?」これはユーザーにとって非常に難しい問題です。難易度でいえばITベンダーの見積もりより、ユーザーの予算決めのほうが難しいです。だから、「予算を決めないでベンダーの見積もり額だけで評価する」というユーザー企業も多いのです。
しかし、そのやり方は大きなリスクを伴います。システム構築は投資です。したがって見返りとなるビジネス上の効果が求められます。この投資対効果をきちんと考えずにベンダーの見積もり金額の比較で判断することの恐ろしさは社長ならば本能的に理解できるはずです。また、見積もり金額だけの比較だとどうしても「安い方」を選びがちです。安くて良いものならば賢い選択ですが、安い見積もりには往々にして「安かろう、悪かろう」があります。これを選んでしまうとシステム構築は必ず失敗し、多大な追加コストと大幅な納期遅延を引き起こします。
見積や予算策定がアナログの勘・経験の世界であるとすれば、企業において最も投資対効果や投資額に対して勘や経験を持っているのは誰か?多くの企業、特に中小企業の場合、それは社長のはずです。社員であれば自分の業務範囲の視野でしか予算を判断できません。会社全体を見たうえで予算をいくらにしたらよいのか、あるいはベンダーの見積もりが投資対効果の観点から将来回収できるものなのか、これを直感的に判断し、決断できるのは社長だけです。
2014年10月