2018年9月10日

【システム企画~情報活用力を上げる仕組み作り】

~問題解決、IT活用の中で必要となる役割②~

前回(2018/7/23)に続き、コトラーとデ・ペスの「A-Fモデル」(D│E│F)について記します。

D:デベロッパ(Developer)

デベロッパはクリエイタの提示するアイデアや設計を受けて、それに形を与え、使えるものにする(原文では“tangiblize ideas”=アイデアを五感で知覚できるものとして表現する)人です。製品やサービスであれば、それを顧客に提供できる形にする人、情報システムであれば開発者がこれにあたります。

IT活用においては、開発部隊を自社で持っている場合には、社内での開発・改修が可能であり、時間や費用の消費量を比較的少なくすることが期待できます。開発部隊を自社に持たない場合には外部に依頼することとなりますが、開発部隊を自社に持っている場合でも、先進性や専門性が高いものはコンサルティングや開発を外注することは有効です。

E:エグゼキュータ(Executor)

エグゼキュータは、デベロッパがアイデアに形を与えて、顧客や利用者が使える状態にしたものを、対象となる人に届ける人です。それが製品やサービス等であれば、マーケティングとセールスを行って売り上げをあげることがこれにあたります。情報システムの場合には、現場への導入と活用促進、さらに、実際にシステムを利用してシステム企画で企図した効果をあげることもこれに該当します。

この役割は、社内で果たされることが多かったところですが、近年ではセールス&マーケティングであれ、情報システムを利用してビジネスプロセスを実施することであれ、社外にアウトソーシングする形も多く出てきています。

C:ファシリテータ(Facilitator)

ファシリテータは、A-Eの5者が連携して企画を具現化していくプロセスの進行を助ける人です。これまでにみてきたように、A-Eの5者はそれぞれ専門性や考え方が異なり、しばしば利害関係や価値観が異なることがあります。それぞれの分野で高い能力が発揮されたとしても、これを調整し、うまく連携させる必要があります。

ファシリテータは、企画の原型となるアイデアの引き出しと評価、多様な情報に照らし行う、そのアイデアに沿って進めることの適否の判断、価値を生む形の創造、製品・サービス・システムとしての開発、それらの利用者への提供と効果獲得のプロセスの幇助と結果の評価を行いやすくする役割を果たします。

この役割は、外部人材に依頼することが効果的な場合が多いと考えられます。原文ではファシリテータの活動内容を表す文に「instrumentation」という語が使われています。「instrumentation」という語のもともとの意味は、オーケストラにおける楽器編成や演奏法です。オーケストラの中にいて、楽団の特徴や構成員のことを総合的に最もよく知っていて、ポジション的にも指導的役割にあるのはコンサートマスタですが、コンサートマスタがその楽団の指揮者になることは稀で、指揮者は外部から招聘されることが多くあります。ファシリテータはオーケストラにおける指揮者と似たところがあると考えます。

2018年9月

▶関連コラム │ 問題解決、IT活用の中で必要となる役割①(2018/7/23)

問題解決、IT活用の中で必要となる役割③(2018/10/29)