2017年4月10日

【システム企画~情報活用力を上げる仕組み作り】

~システム企画の実際(システム企画で困難に遭遇した場合①)~

今回はシステム企画の実施時に遭遇することがある困難とそれに対応する際の考え方や方法について記してみます。

「困難」とは以下のことを表すとします。

― 簡単には成し遂げられないこと。実現・実行が難しいこと。(大辞林より)

ある事態を困難と感じるのは、実現・実行のために必要なものが不在であるか、不足しているからであるといえます。ここでは、システム企画の実現・実行にあてはめて、以下の類型に分けてみていきます。

1.インプットの不足

2.プロセスの停滞

3.アウトプットの未完成

1.インプットの不足

システム企画におけるインプットの不足の例として、先行フェーズである経営(及び事業・業務)戦略からの情報の不足を取り上げます。

以前(2016/10/24)述べたとおり、システム開発は「複数のフェーズ(工程)が複数の人々によって行われ、先行フェーズの品質が後続フェーズの品質に影響する」ものでした。経営戦略が不在またはその存在が不明、あるいはその内容が不明瞭であるままにシステム企画を行うと、システム開発の目的や期待効果、システム導入の範囲、稼働開始までのスケジュール、予算規模等、企画フェーズ検討・決定すべきことが不確かなものとなります。それに基づいて開発されたシステムは、経営目標達成に役立つ可能性は低くなります。事業・業務レベルでも同様です。

この場合、不足しているインプットを企画フェーズで補い、充実させるためには、経営陣とユーザ部門を巻き込む必要があります。方針だけ与えられて、「あとはIT部門で考えろ」では事態は改善されません。例えば、売上増大、支出削減のような命題があったとき、どうやって売上を増やすのかは経営層が考えることです。何故ならば、それを実現するためには経営資源の獲得と配分の決定が必要で、それは経営層にしかできないことだからです。

売上増大のために営業の動きがどうなればよいのか、情報活用はどのようにしたいのかは、事業部門が考えることです。「営業情報を共有して、ステータス管理と施策立案を行う」という場合、SFAを導入すればいいのか、どこまでITでカバーすれば効果が上がるのか、マネジメント層が情報を見られればよいのか、営業担当者の評価をどのように行うか等の違いによって企画の内容が異なってきます。これらのことが経営層の事業部門により決められて行かなければ、システム企画の精度は上がりません。このような場合、そのままいったら失敗する可能性が高く、IT部門としては無理して進めないことです。

システム企画の先にはビジネスプロセスの変更があり、システム投資があります。それらが行われるためには「組織の意思決定」が必要で、戦略レベルでそれができるのは経営者または権限と責任を持つ者です。「個人の思いつき」や「個人の意思決定」では組織の計画や行動について、決定も実行も行えません。まずは当事者から情報を得ることです。そのためには、公式の場、定例の場に参加してもらうのがもちろんよいのですが、それが難しくても、経営・事業の責任者に対し、「お考えを、いろいろお話を聞かせてください」としてインプット情報を取得して、議事録を作成しておくことです。

より具体的には、稿をあらためて記したいと思いますが、上記のことを自組織内で進めることが難しい場合には、コンサルタント等の外部専門家に依頼して、行う方法の提示、経営・事業上の問題解決のアプローチとリスクの指摘、他社事例の紹介等の支援を受けるのも一法です。

2017年4月