2015年1月26日
【RFPコンサルタントの日常】
~演劇とプレゼン、そしてピッチ~
1.演劇サークルの同窓会で
筆者は大学時代、演劇サークルに所属していた。もっとも役者ではなく舞台スタッフとしての所属であったが、人が足りない時に出演したこともある。以下はその同窓会での話である。
「会社に入ってプレゼンとか見ることあるけど、あれって読んでるだけだよね」
「そうそう、その場に立っていない」
「ひどい人だと、頭に字幕が透けて見えるよね」 などなど。
演劇をあきらめた人が多く、愚痴もあってかこの議題は1時間程度続いた。彼らの言うことは一理ある。しかし、そもそも演劇とプレゼンでは前提が違う。
まず、プレゼンターの大部分は俳優や役者ではない。また、演劇のように十分な稽古ができない場合も多いだろう。そして、プレゼンターには生活がある。こと日本社会においては無難さを考慮しなければならない。機を狙った表現や役作りは、自滅するリスクを考えると回避せざるを得ない場合が多いだろう。
2.演劇とプレゼンの類似性
では、演劇とプレゼンはまったく違うのだろうか? 筆者が思うに、最大の類似性は「説得」にある。
役者は、その役柄や世界観をセリフや所作を通して客観に説得する。客観が納得いく演技だった場合、舞台にリアリティが生まれる。
例えば「怒っている」という演技をしているとする。同じ怒っているという演技でも、当然演技の差がでる。すなわち怒っている人と、怒っている演技をしている人に分かれる。もちろん役者は怒っていない。ただの演技である。舞台上でのうまい演技は聴衆を納得させるのである。
同様にプレゼンターは製品やサービスを聴衆に納得させる。「この製品・サービスを導入すれば、私たちは幸せになる」という認識が聴衆に生まれるのである。通販番組はこの説得を長時間行い、視聴者に「この製品があれば簡単に痩せられる」といった認識を与えるのである。
3.いうまでもなくプレゼンにとって「説得」は重要
プレゼンの目的は「説得」である。当たり前の話かもしれない。そして、説得を重視したプレゼンを「ピッチ」と呼ぶことがある。
経済産業省の「コンテンツ・プロデュース機能の基盤強化に関する調査研究 プレゼンテーション」によれば、「特に何かを説得したい場合のプレゼンテーションのことをピッチと呼ぶ」とのことである。プレゼンは中立的な情報提供という意味合いもあるため、より説得に特化した名称が生まれたのであろう。
また、「コンテンツを作る前に、先にコンテンツのアイディアを売り込むために買い手や投資家を見つけて、収入が確実となってからコンテンツを作る手法」とある。つまりはまだ具体的でないものを熱意やアイディアによって売り込む手法である。
私たちが行っているRFP作成支援など、サービスに関するITの成果物は形が見えづらいものが多い。情報システム部の部員であればイメージがつくが、役員など決裁者はイメージできない部分が多い。見えづらいものをどう説得するか、ここでプレゼンのピッチ寄りに傾けることが有効に思われる。
あらためて、「プレゼンにおける説得の重要性」に気が付いた一夜であった。
2015年1月