2016年6月6日

【RFPコンサルタントの日常】

~システム部門の役割を最定義する③ 認識のギャップを埋める~

認知と認識

システム部門の役割を再定義①(2016/2/29)では、会社とITとの関係性について紹介し、②(2016/4/18)では現状分析によってシステム部門の役割を定義することを紹介した。

これらは、システム部門の認知活動と言える。この認知した結果を他者に認識させなければ意味は薄い。例えば、運用中心のシステム部門が、戦略の役割を認知したとする。しかし他部門にその認識がなければ、いままでのまま運用関連のやり取りしか発生しない。そしていつしか戦略の役割を忘れ、元の状態に戻ってしまうといった事態が考えられる。そうさせないためにも、システム部門の役割を他部門や関係会社に認識させる必要がある。

なお、活動のサイクルは以下である。

認 知・・・システム部門の役割を定め、その役割に応じた活動を内部で実施すること。

認 識・・・他部門にシステム部門の新しい役割を認識させること。

改 善・・・他部門に認識させる活動において特定した役割上の課題やギャップを改善すること。

例)システム部門に業務スキルが足りない。会社のITを監査するスキルが足りない。

他部門の認識を埋めるためには、躊躇せず実施することが肝心である。ではどこから始めるか。今回はその切り口を紹介する。

切り口1<名称の変更>

切り口の内、単純かつ効果的なものは、システム部門の名称を変更することである。名は体を表す。役割を演じている内に、理想とする役割と徐々に変化していくであろう。名称変更が難しい場合は、チーム名称を変更するのが適切である。いわゆる「情報システム部、IT戦略チーム」である。チーム名称もすぐに変更できない場合は、「IT戦略担当」と個人役割を変えるのも一考である。

切り口2<システム調達に乗じる>

目指す役割が、戦略・企画寄りであった場合、また近い未来で基幹システムの入れ替えが控えている場合、そのプロジェクトに乗じるのが効果が高い。例えばベンダーに言われるがままのアップグレードであったのを、システムの企画から再考する形に変えるのだ。

会社戦略を受けてIT戦略、そのIT戦略を受けてのシステム企画という位置づけなので、戦略・企画寄りの役割と認識してもらうには、打って付けの題材である。しかし、難易度が高い。特に今まであまり関与してこなかったシステム部門にとってはハイリスク・ハイリターンとなる。その場合は外部の力を借りる等して、すなわち研修やコンサルタントの力を使って、そのやり方を盗むことが必要である。

切り口3<現システムを評価する>

次期基幹システムのリプレースが遠い場合は、現システムの評価から入るとよい。構想当初想定していた効果がどの程度反映されているか、残課題や新たな課題はないか、視点が変化しBIのレポートは陳腐化していないか。業務フローに変更や追加はないか。こういったことを聞き出し、フィードバックすることで、経営層、マネジメント層、現場に対し密接にコミュニケーションを取ることができる。

このコミュニケーションの間に、システム部門の役割を認識させていくのだ。つまりは、経営層に対しては戦略と関連付けたコミュニケーション、マネジメント層には各事業課題に関連付けたコミュニケーション、現場にはオペレーション課題に関連付けたコミュニケーションを取っていくのである。

なお、この評価で得た情報は、次期システム構想の叩きとなり、またシステム利用中の改善にも繋がるので、無駄ではない。

肝心なのはサイクルは何度も繰り返すこと

役割を再定義し、他部門に認識してもらうためには、「認知と認識、改善」のサイクルを何度も回さなければならない。1回では成し得ないのが現状である。時代は変化している。IT環境も変化している。何度もサイクルを回し再生していくことが、意義あるシステム部門のであり続けるための鍵である。

2016年6月

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※ 関連コラム

【RFPコンサルタントの日常】「システム部門の役割を再定義する① 会社とITの関係性」(2016年2月29日)

【RFPコンサルタントの日常】「システム部門の役割を再定義する② システム部門の現状分析」(2016年4月18日)