2017年9月19日

【ITの引っ越し~持っていけば動くわけではありません~】

~海外メーカーと国内メーカーの志向性~

前回(2017/8/1)、データ通信と音声通話の統合について触れ、日本国内では統合の機運が弱いのではと述べましたが、CiscoやAvayaなどの欧米の通信機器メーカーやMicrosoftやGoogleをはじめとするソフトウェアベンダの方向性と比べた場合の話で、気運が弱いというよりは志向が異なるのかもしれません。

拠点間VPNと組み合わせて離れたオフィス同士での電話を内線化する仕組み自体は国内でも結構古くから普及しています。たとえば国内ルータ市場ではヤマハがCiscoと同等の存在感を持ってシェアの3割前後を長く占めており、早くからVPNとSIPを搭載するなど電話のIP化への取り組みには長期に亘る実績があります。しかし、搭載されている機能を比べてみるとやはり海外メーカーとは方向性が異なると感じられます。ヤマハに次いで普及しているアライドテレシスなど他のメーカーの製品を見ても同じ傾向に見えます。

たとえば、海外メーカーの製品やサービスを見ていて強く感じるのは、あちらの人は古臭い呼び方ですがテレビ電話が好きなんだなぁということです。国内メーカーも作ってこなかったわけではありませんが、PolycomやTandverg(Polycomに買収された)などの電話をベースにしたビデオ会議システムがそれこそインターネットが普及するよりも早くから外資系のオフィスでは当たり前に設置されていました。国内オフィスにいる日本の方々は「あっちがこれをやりたがるから仕方ないんだよね」という雰囲気でこのシステムを使っていましたが、「声だけでいいんじゃない?」という気分を強く感じました。

こういったシステムを当たり前に使っている環境であれば、音声も映像も高額な国際電話ではなく、いつでも繋ぎっぱなしになっているインターネットの上に流したいと考えるのは当然なのかもしれません。オフィス内の電話機自体が旧来の据え置きの電話機ではなく携帯電話やスマートフォンに置き換わりつつありますが、IP化してしまえば据え置きの通話専用の電話機端末は不要です。また、パソコンやスマートフォン上のソフトウェアに置き換えてしまえば、映像も音声も好きなだけ使えるのだからそれでいいんじゃないかという割切りと、そういった環境を構築するための基盤として自社製品のラインナップを揃えているように思えます。

私自身がこの手のシステムをしっくり感じないための偏見かもしれませんが、日本人のユーザーさんで相手の顔を映したディスプレイに向き合って言葉を交わすことを好む人に出会う機会はそれほど多くはありません。音声通話をIPネットワーク上でうまく利用できればいいのであれば、海外メーカーがやっているような機能までは必要ないという割切りがあるような気がしています。

2017年9月