2015年4月7日

【ITの引っ越し~持っていけば動くわけではありません~】

~サーバルームの環境整備 (3) 電源編~

前回(2015/2/16)、空調設備に関して考えてみました。サーバルームを設置するには、独立して運用可能な設備が必須ですが、ビルの設備事情によっては標準装備のエアコンで空調を賄いきれるのか、事前の確認と検討が欠かせませんが、同時に忘れてならないのが、空調設備を稼働させるための電力供給の問題です。これはオフィスに限った話ではなく、一般住宅の引越でも問題になることがあります。

一般の住宅でもエアコンを設置するとなると、それまでの契約アンペア数では賄いきれないために契約を見直したり専用コンセントの増設が必要だったりということがありますが、業務用機器の仕様をカタログで眺めてみると運転電流が10Aで収まらず、50A以上で3相200V供給が必要なものがあたりまえに並んでいます。

単純に掛け算すれば空調設備1台で200V×50A=10000W=10KWという数字が出てきます。

これだけ大容量の電力を消費する機械を24時間休むことなく稼働させるとなると、ビルに標準で備わっている配電設備だけで電力供給を賄えるのかどうかが、移転に要する日程や費用に大きく影響してきます。すでに入居しているテナントの電力利用状況次第で条件は異なりますが、場合によっては電源の追加引込と配電盤増設が必要になることもあります。

空調機と同様、配電盤も注文したら即日納品可能な類の製品ではないし、品目や発注時期によっては受注生産のために予定している移転期日までに設置が間に合うかどうかも考えなければいけません。加えて電線の引込工事や配電盤設置の日程調整だけでもひと仕事で、このあたりをきちんと押さえておかないと、空調機は届いて据え付けが終わったけれど肝心の電力供給が間にあわないという笑えない話になり、こうなると当然サーバ自体を動かすことができません。

配電設備増設となると、当然のこととして配電盤からサーバルームまでの配線も追加が必要になってきます。3相3線200Vによる電力供給の場合、普段私たちが目にするコンセントと形状が異なるのはもちろんですが、引き回す配線の企画も異なります。私たちが日常目にする電源ケーブルは被膜の中に線が2本入っていますが、3相3線の場合は中の線が3本になっているので、通常のOAタップの配置とは別系統での引き回しが必要になります。

このように、サーバルーム設置のために空調設備に加えて電源設備の増設が必要になると、規模によってはここでもウン百万円規模のコストが飛び出してくる可能性があり、空調と電源の整備のために合わせて1千万円前後の見積が飛び出してくることもあり得ます。移転の話が持ち上がった段階で、サーバルームに必要な空調能力と電気容量を頭に入れておき、移転先候補物件を検討する段階で既設設備の能力との差についても検討する際の条件に加えておくことをお勧めします。

また、現在稼働中のサーバルームを開設した時点での担当者や当時の資料が残っていれば概要把握が容易ですが、これらに不足がある場合は、移転話の有無にかかわらず今後の設備更新の際にも有用なので、現時点での仕様を確認して資料をまとめておくこともお勧めします。

2015年4月

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※ 関連コラム

【ITの引っ越し~持っていけば動くわけではありません~】 「サーバルームの環境整備(2)空調編」 (2015年2月16日)

【ITの引っ越し~持っていけば動くわけではありません~】 「サーバルームの環境整備(1)」 (2015年1月5日)