2018年3月26日

【RPAコンサルタントの日常】

~回転寿司から、寿司が消えた日~

回転寿司屋

2018年3月の第一日曜日、ある回転寿司屋に家族で行く機会があった。チェーンの店ではないが、席数70程度であろうか、その半分がボックス席の回転寿司店だ。その店には数回行っており、安くてそこそこいいネタを出す、いい店という評価をしていた。

違和感

その日、回転寿司のレーンから寿司が消えていた。代わりにネタの描かれた立て札が回るようになっていた。成る程、回転寿司とは名ばかりで、注文制の寿司屋なのだな、と忙しなく動いている職人に声をかける。

「コハダとエンガワ、タマゴと稲荷をください」

「すみません、これに書いてください」

提示されたのは、小さな注文票とボールペン。おっと、そういう仕組みになったのなら書きましょう。コハダ、エンガワ、さび有りで1皿ずつ、タマゴと稲荷は子供用だからさび抜きで1皿ずつだな、おっとあら汁も頼んでおこう。あとはビントロとオニオンサーモン、何、カキフライも食べたい? ではそれも。こうして書き上げた伝票を、相変わらず忙しない職人に渡そうとするが、位置が遠い。そういえば以前来たとき職人だけで4名いた。今は2名と半分になっている。職人を呼ばんとしたその時、ホールを巡回していたスタッフが伝票こちらで承りますと、忙しそうに伝票を引き取ってくれた。その後、そのホールスタッフは注文した寿司の名前を職人に伝え、裏の厨房に引っ込んだ。揚げ物、焼き物、お椀は厨房で調理するのであろうと考えながら、職人を一瞥すると、2人の職人は、それぞれのネタの領分で、全く無駄のない洗練された動きをもって寿司を握っていた。全ての寿司が出てくるまで、ものの5分とかからなかった。

注文の行方

我々はあっという間にそれらを食べた。そして追加の注文を書き上げた我々は、伝票を渡そうとホールスタッフを探した。何処にもいない。そういえばホールの人間も前はもっと多かったはずだ。まあ仕方がない、職人に直接渡そうとするが、どうにもタイミングが合わない。忙しなく寿司を握り、時には客に寿司を渡し、また、その渡しかたが一皿ずつなので、時間がかかっていた。結局、伝票は運良く呼び止めたホールスタッフに渡すこととなった。辺りを見回して見ると、我々だけでなく、注文に困っているお客さんが大多数であった。皆、ホールスタッフを探し、見つけると溜まっていた注文伝票を一気に渡す。そしてその大量の注文を2人いる職人が、無駄のない動きで一気に握りきるのである。

そう、寿司が来るのは早い。しかし、厨房が担当の料理は一向に届く気配がない。それもそのはず、それを運ぶべきホールスタッフが全然足りないのである。目視した限り、ホールスタッフは2名だった。その2人が、席に案内をし、注文を受け、職人に注文を伝え、客が帰るときに皿の枚数を数え、会計をし、ポイントカードの勧誘をし、帰った客のテーブルをかたづける。そしてその間に来た新規客の案内をする。料理を運べるのはその隙間だけなのだ。当然、来たあら汁はぬるかった。恐らくはデシャップ台で、相当の時間が経っていたのであろう。我々は元来猫舌の一行である故、ぬるいのはある程度歓迎する。しかし汁から顔を出したアラが冷たかったには苦笑した。

人減らしだけ行ったので、こんな店になった

以前の店には活気があった。寿司は回り、職人は客からの口頭の注文を威勢よく受け、無駄なく握り、ホールスタッフは案内と会計、配膳と目まぐるしく動く。それがこんな状態になってしまったのは、おそらく、コスト削減が原因であろう。人減らしのことである。そして、人減らしするにあたって、減らしてもホールの運営が行き届くような工夫がされなかったに違いない。

最初から考えてみよう。まず、席に案内された。次に注文だ。この時、注文票が客のわかる位置に置いていなかった。よってどうやって注文をしていいかわからない状態になる。これは注文までの時間が伸びてしまい、結果回転率を下げる結果となる。次にホールスタッフが注文受け係となっていることである。もちろん職人も注文を受けるのであろうが、職人よりも余裕のないホールスタッフが注文を受けることにより、案内や会計の時間が奪われるだけでなく、客が注文できない時間が増加することとなる。

原因は職人の有能さ

寿司は安定して客へ供給された。これは職人の熟練した動きに起因する。しかし、これがこんな店になった原因ではないか、と推察する。職人は人数が半減しても対応できていた。対応できていたがゆえに人を減らしても問題ないという判断が経営者側に生まれたのではないか。そして、その人減らしの判断が拡大し、ホールスタッフまでも半減してしまった。以上は推察に過ぎないが、皮肉にも仕事ができることが、マイナスの結果を生み出す要因になってしまったのではないだろうか。

そうして、効率性を上げる措置を取らず、単純に人だけを減らしてしまった。いろいろ工夫はできたはずである。例えば、お金はかかるが、皿の自動計算機、時間のかかる皿の計算に対応するための機械を入れる。裏の厨房にもし人がいるのであれば、空いた時間は配膳をする。これにはお金はかからないはずである。前述の通り職人が注文を積極的に受け取ることも、お金のかからない対策の一つであろう。できる人を基準にすることは、仕事量を見誤る要因である。この店から実感が得られた。

2018年3月