2015年11月9日

【ITの引っ越し~持っていけば動くわけではありません~】

~ラックがエレベータに収まらない!~

今回は引っ越しの際に遭遇したトラブル事例を紹介してみます。

以前(2015/1/5)にも書きましたが、サーバラックの高さは190cm程度が一般的です。新しいラックを導入する際にも、オフィスが入居している建物の構造次第では「こんなでかいものをどうやってサーバルームに搬入するの?」と問題になることがあります。

昭和40年代竣工か、あるいは30年代に建てられた古いビルでのケースです。この時はお客様の指定で運送担当に一般的な家具什器類や書類などを担当する業者さんと美術品や精密機器を担当する業者さんと2つのチームが参加していました。

一般的な荷物と違い、美術品や精密機器の運搬ではサスペンションなど衝撃対応仕様のトラックを採用していました。そういったチームがやって来て仕事を始めたのですが、確かにサーバを梱包する際の丁寧さには「さすが専門だな」と感心していました。ところが最後の最後、サーバが納まっていたラックを搬出する段になって呆れる事態に直面しました。

ビルが古いためでしょう、最近のものに比べるとエレベータが小さかったため、組み立てたままのラックが高すぎてエレベータの中に入らないことが判明しました。ラックが高すぎる場合、ラックを斜めにしてエレベータ内になんとか収める場合もあるのですが、このエレベータの奥行きでは斜めにすると今度は奥行きが足りないためにドアも閉められません。

ラックの底部についているキャスターを取り外せばどうにか収まることはわかったのですが、そういった作業は想定していなかったため、持ってきていた工具はサーバをラックから取り外すのに必要な電動ドライバー程度で、キャスターの固定部分を緩めるために必要な工具はありませんでした。その時は夕方から解体・搬出を始めて夜の間に移転先に搬入して設置という段取りだったので、往復で数時間かかることが確実ですが、工具を取りに帰っても事務所は閉まっている時間です。さてどうしたものかといったん暗礁に乗り上げてしまいました。この時は搬出まで私も立ち会うことになっていたので、「これは徹夜でお手伝いかな」と覚悟し始めた状況です。

1時間ほどみんなでウンウン唸っていましたが、うまい解決策が出るわけでもなく「さてどうしたものか」と困り果てていたところで、ふと、並行して動いている什器担当部隊の作業が目に入り、そこではまさに必要な工具を使って什器をバラしていました。そちらの業者さんに平身低頭お願いして、そちらの作業が終わったら貸してもらう約束を取り付けることができ、なんとか日が変わる前には搬出することができました。

設置した際にもエレベータに収まらずにキャスターを外したはずなので、当時の経緯を知っている人が残っていれば、あらかじめ注意してもらえたとも思います。また、事前に搬出物の寸法を意識して搬出経路を下調べしておけば回避できた話ではありますが、入っているもは当然出すこともできるという思い込みが仇になりました。

昭和の時代は一般的な成人の想定身体サイズが170cmで大男ですから、建物各部の寸法や輸送機関の座席などいろいろなところで175cm弱の私は窮屈な思いをしていましたが、こんなところでも昭和のサイズが影響するとは思いもよりませんでした。(ちなみに日本人成人男子の平均身長が170cmを超えたのは1990年代前半で、1970年代は160cm前半、1980年代でも166cm程度です)

最近のエレベータであれば入口で200cm以上、床から天井までは220~225cm程度はあるためあまり気にする必要はないでしょう。また、今どき昭和50年代までに建ったビルに入居していることは少ないでしょうし、これから入居することも稀でしょうが、このタイプの建物に関わる場合は念のため確認をお勧めします。

2015年11月