2019年6月3日

【システム企画~情報活用力を上げる仕組み作り】

~論点は不明確になりやすい~

前回(2019/4/8)「第三者として合意形成に関与する」の内容のいくつかについて、記していきます。

論点の明確化

論点とは「議論の対象となっている問題点」ですが、これを明確にすることは、議論の目的を達するうえで、また組織であれば意思決定を経て施策を実行するうえで非常に重要なことです。ドラッカーは著書(※)の中で「最も重要な間違いは間違った答えを出すことではなく、間違った問いに答えることだ」と言っています。

(※)「Men,Ideas and Politics」2010年 Harvard Business Review Press

しかし、論点が不明確になったり、見失われたりすることがあります。「論点がぼやけている」「論点がずれている」とはよく言われることです。そのような指摘がなされるときはまだいい方で、そうなっていることに議論の参加者の誰も気づかないまま、会話が進行することがあります。この場合、言葉が交わされ、時間が経過しても結論を得られず、会議の目的が達せられない、ということが起こります。

ここで起こっていることは何であるか、また、どうしてこのようなことが起こるのでしょうか。起こっていることは、端的に言えば伝言ゲームです。実際にゲームとして行われていなくても、人と人とのコミュニケーションにおいて、それは常に起こっているのです。それが起こる原因や仕組みは以下のように整理できると考えます。

【A】まずは議論をしている当事者について以下のようなことが考えられます。

◎ そもそも「論点」を意識していないから

◎ 相手のいうことをよく聞いていないから(非理解、曲解、不注意)

◎ 「話したいこと、話しやすいこと」を話すから(思いつき、割り込み、未整理)

【B】次に、構造的なところでは、以下のことが挙げられます。

◎ 一つの会議に一つの論点とは限らない

◎ 一つの論点について、複数の視点が存在する

◎ 議論に使う周辺知識・情報の質と量が人によって異なる

さらに深いところから考えるならば、人間の認知の特性も見逃せません。

【A】については、対象を認知する際、すなわち情報を受容する際に、人間は感覚や感情によるフィルタリングやバイアスの影響から自由ではないことが関係しています。フィルタリングとバイアスは原因と結果、全集合と部分集合の関係でみると明確に分離できないのですが、私なりに粗く理解するところは以下のようなものです。

フィルタリングは 人間が生物として、生存本能、自己保存本能を持っているために、不可避的に起こります。危険なものには、警戒・回避、場合によっては無視・麻痺が起こり、嫌いなものには遮断・排斥・攻撃が起こります。

バイアス(bias)の原義は、「認知・判断に不正な方法で影響を与えるもの」で認知心理学では、分類や細別の方法にもよりますが、100種類以上が考えられています。大まかにいえば、思考の偏り、偏見、思い込みなどのことです。

【B】については、3点それぞれが互いに関連します。一つの会議に複数の議題がかかることは珍しくないどころか、その方が多いでしょう。さらにそれら複数の議題がまったく無関係に独立してあるわけではないことが多いと考えられます。一つの議題についても、視点が異なれば関心が異なり、話す内容と力点の置き方、聞く時の注意力の向け方も異なります。

視点や関心の違いからくるこのことは、考慮に入れたり、発言に入れたりする周辺知識・情報の違いにも関係しています。ある者にとってはよく知っていること、不可分のことが、別の者にとっては、知らないこと、無関係なこと、場合によってはノイズになります。

2019年6月