2019年6月17日

【中小企業のIT投資は社長が仕切れ!】

~AI好きの社長は是か非か?~

ある大手ITベンダーのマネージャーにお聞きした話です。この大手ベンダーはAIブームにあやかって、経営者向けのAIセミナーを何度か開催しました。経営者の方々もAIには関心が高く、各回とも満席の盛況とのこと。ただし、さすがにすぐに行動を起こす経営者ばかりでなはなく、だいたい平均して各回5名くらいの経営者が「我が社も明日からでも導入を検討したい」と申し出るそうです。そしてこのすぐにやりたいという経営者は専務や常務ではなく、ほとんどが「社長」だそうです。それも当然のことかもしれません。社長だからこそ自分の意思で「やる、やらない」を即断即決できます。常務や取締役では一度会社に持って帰り、社長に相談する必要があるでしょう。また、社長にもいろいろな性格の方がいらっしゃいますが、1つの類型として「新しい物好きでせっかち」という性格があると思います。面白いものがあれば他社よりも先にすぐにやりたい、と考える社長を筆者は何人も知っています。

ただし、AIを導入して実際に業務上の成果を出すのは簡単ではありません。大手ベンダーのマネージャーいわく「すぐに導入したい、と申し出ていただくのはセミナー開催の見込み客獲得の目的に合致するのでうれしいですが、本来は業務上の課題が先にあって、そのソリューションとしてAIが最適なので導入するという流れであるべきです。AI導入が目的となってしまうと成果を出すのが難しいのです。セミナー開催している立場からは言いにくいのですが・・・」

たしかにマネージャーのおっしゃる通りでしょう。手段と目的が混同してしまうと、たいていの場合はうまくいきません。しかし、それでも筆者は新しい物好きの経営者を評価したいと思います。以下、4つのパターンを比較してみます。

① 自社の経営や業務の課題を理解し、そのソリューションとしてAIを導入する。

② AIセミナーに関心を持ち、出席して、面白いと思ったからとりあえずAIを導入する。

③ AIセミナーには出席したが、時期尚早と思い、見送る。

④ そもそもAIに興味がないからセミナーにも参加しない。

このパターンで新しい物好き社長は2にあたります。もちろん一番賢いのは①でしょう。そして④はこれからの時代の社長としては厳しいです。比較となるのは②と③です。ケースバイケースですし、評価の観点によってどちらが良いか分かれると思います。筆者は②を支持します。②であれば失敗も多くなりますが、失敗を経験しないかぎり「自社の独自性」を造ることはできません。③は手堅い経営になるかもしれませんが、常に2、3番手以下のポジションになってしまうのではないでしょうか。

新しいことや変わったことをやるのは心身ともに大変なことが多いですが、やはりそれにチャレンジするのが社長というポジションのはずです。

2019年6月