2016年2月8日

【ITの引っ越し~持っていけば動くわけではありません~】

~LAN配線徒然②~

前回(2015/12/24)の最後に今回は配線計画について書いてみようかと記しましたが、つい先日実際の事務所移転のお手伝いをする機会があったので、そこでの実例でLAN配線の実際を紹介してみます。

一般的な事務所であれば、以前紹介したように内装や設備などについて各種の事前工事を行ったうえで入居しますが、今回の場合ある意味一時使用的な使い方をするためでしょう、以前の入居者の退去後を掃除しただけ程度の部屋へ引っ越すことになりました。いわば居抜きで仮住まいの事務所を構えた形になります。このような条件ですから、空調も電気設備もあったものをそのまま使うことが前提です。小規模な所帯ですからこれらについてはあるものをほぼそのまま使うことになるし、小規模なNASでファイル共有を行う程度でインターネットに接続できていればいいという環境です。

居抜きといっても机やキャビネットまで残っているわけではありませんから、今までの事務所で使っていた机や什器類を新しい部屋の中に持ち込みました。LAN配線はこれらの配置に則ってレイアウトを行うわけですが、結構古いビルのため床下に配線用の空間が用意されていません。十分な時間とコストをかけることが可能であれば、既存床の上にOAフロアを作って各種配線用の空間確保をお勧めしますが、今回はそのような余裕もありません。

こうなると床にケーブルを這わせるか極力すべてを無線で賄うかのいずれかを検討することになります。すべて無線LANにしてしまえばケーブル配線の手間がありませんからすっきりと仕上がりますが、今回の場合、ほぼすべてのPCがデスクトップ機でした。いまどきのノートPCであればほぼ間違いなく無線LANアダプタが内蔵されているので、アクセスポイントを仕立てて、そのSSIDに繋ぐ程度でLAN構築ができてしまいます。しかし1台を除いてすべて一般的なデスクトップ機だったため、無線で構築するにはUSB接続の無線LANアダプタなどを調達して個々のPCにインストールする手間が必要になります。1台あたり2,000円としてもまとまればそれなりのコストがかかることに加え、セットアップに要する時間を20分としても10台で述べ200分=3時間前後の作業時間を要する手間がかかってしまいます。

席のレイアウトは島型で、それぞれの島に適当なポート数のスイッチを置き、ここから必要なLANケーブルを引き出すほうが短い時間と低コストで対応できそうな規模だったため、今回は無線化を見送って物理配線で対応することになりました。

LAN配線の方法ですが、床の仕上げがタイルカーペットを敷き詰めたタイプだったため、フラットタイプのLANケーブルを用意してカーペットの下を這わせることで対応しました。フラットタイプのケーブルが出回るまでは普通の断面が丸いLANケーブルを這わせ、足を引っかけたりしないように保護のモールで覆うことが普通でした。モールは歩行の邪魔になるし時間が経つと割れてしまったりするためできれば使いたくない方法です。この時代は床の材質もPタイルが多かったので他に手軽な方法がなかったので仕方がありませんが、最近はタイルカーペットを敷き詰めたフロアが増えたため、フラットタイプのケーブルをカーペットの下に這わせることで対応できるところが増え、上げ底のOAフロアでなくても床にケーブルを這わせることができるようになったので助かっています。

準備に時間的な余裕があれば電話配線の業者さんにケーブル敷設の実作業を委託することが多いのですが、今回はここでも急ぎの対応だったため、久しぶりに自分で敷設しました。やはり用意しておいて良かったなと思ったのはスクレーパーと呼ばれるヘラです。タイルカーペットは床に粘着剤で貼り付けてあるだけなので確かに剥がすことは可能ですが、素人が簡単に剥がすことができるようなら、施工不良と言われても仕方ない程度には床にしっかり固定されています。まっとうな施工であれば、簡易なものであれそれなりの道具は必要です。以前、まったく別の必要があってスクレーパーを持っていたのですが、まさか今回これが役立ってくれるとは思いませんでした。

2016年2月

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※ 関連コラム 【ITの引っ越し~持っていけば動くわけではありません~】 「LAN配線徒然①)」 (2015年12月24日)