2015年11月2日

【システム企画~情報活用力を上げる仕組み作り】

~システム企画の手順と方法(各ステップの内容③)~

前回(2015/9/24)挙げたトレーシーとウィアセーマによる「顧客に提供する価値基準の3つの類型」とそれぞれにおけるIT活用の例をみていきます。

1.オペレーショナルエクセレンス(業務における卓越性)

「オペレーショナルエクセレンス」戦略をとる企業は、オペレーション(業務・作業の実施方法)における優位性をもって、スピードやコストで打ち勝っていくことを目指します。重視されるのは「業務効率」で、その向上を図る重要成功要因は業務においては意思決定及び作業の迅速性、情報システムにおいてはデータの信頼性とデータ活用時の操作性です。

あるアメリカの格安航空会社は、戦略マップ上に「地上での迅速な折り返し」を重要成功要因として挙げています。これは「飛行機は飛んでいる時に利益を生み出す」という仮説、「飛行機の稼働時間を多くしたい」という要請に基づくものです。そのために、航空機の種類を少なくすることによる整備オペレーションの効率向上、飛行中の運航データを収集するシステムの導入による航空機の状態把握精度の向上、運航スケジュールの最適化や故障に起因する遅延の抑制が実現されています。

2.プロダクトリーダーシップ(製品の先進性)

「プロダクトリーダーシップ」戦略では、顧客の期待に応える、または期待を超えるような先進的な製品やサービスを開発し、提供することで価値を創造します。代表的な業務上の要請は「研究開発における創造性と効率を高めたい」です。

たとえば、生化学分野では、膨大な情報をデータベース化して、情報の蓄積・検索、シミュレーションを行って新薬開発等につなげています。アメリカの国立衛生研究所(National Institutes of Health)は、アマゾン社(Amazon.com,Inc)との共同プロジェクトにより、ヒトの遺伝的変異に関するデータをAmazon Web Services(AWS)上に載せ、研究者が無料で公的に利用可能なデータセットにアクセスできるようにしています。

3.カスタマーインティマシー(顧客との親密性)

「カスタマーインティマシー」戦略では、顧客と親密な関係を築き、自社に対する顧客のロイヤリティを強化することを目指します。それは顧客セグメントや個々の顧客が持つニーズにより合致した製品やサービスを提供することで達成されます。業務上の要請は「顧客を知りたい、それぞれの顧客の期待に応える製品やサービスを提供したい」ということです。

ホテルや金融サービスでは、顧客の属性や家族情報、利用履歴を情報システムに登録し、従業員間で共有することによって、また顧客からのフィードバックの受付とそれに対する回答にITを利用することなどによって、製品やサービスの改善に活かすことが行われます。ネットショップにおける「お勧め」の表示も、インターネットやパーソナルデバイスの普及とそこからの情報収集・分析技術の進歩を受けた「ITならではのカスタマーインティマシー」の実践例といえるでしょう。

上記のいずれにおいても、事業や業務の要請とそれに応えるシステム企画~開発が行われています。

2015年11月

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※ 関連コラム 【システム企画~情報活用力を上げる仕組み作り】 「システム企画の手順と方法(各ステップの内容①)」 (2015年8月10日)

【システム企画~情報活用力を上げる仕組み作り】 「システム企画の手順と方法(各ステップの内容②)」 (2015年9月24日)