2018年6月12日

【ITの引っ越し~持っていけば動くわけではありません~】

~クラウドについて考えてみる②~

前回(2018/4/16)はクラウドベースのストレージサービスを利用する際には継続性を考慮に入れておくべきで、運営主体の信用性や継続性を考えると有償サービスが安全だという面白みのない結論でした。面白みはありませんが、その場限りで無くなっても構わないデータでない限りは結局どこに保存しようがその場所が安全で長期にわたってなくならないという信頼が欠かせません。

普及の度合いや利用者数などの観点ではこれも面白みのない結論ですが、ビジネスで利用するにはMicrosoftのOffice365 for BusinessかGoogleのG Suiteのいずれかが提供するサービスを選択することになるでしょう。(無償で提供される個人向けのOne DriveやGoogle Drive、iCloudはここでは除きます)これらが提供するストレージサービスを本格的に利用していけば、今まではなかなか外部化することに抵抗を感じていた社内向けのファイルサービスをクラウドストレージで外部化することも実際の検討課題になりえるのです。

さまざまなシステムがクラウドを利用して外部化されオフィスの外に設置されることが多くなってきましたが、セキュリティの問題は当然としてオフィス内からのアクセス速度と大容量のストレージに対する費用の面からファイルサービスを外部化することはあまり一般的ではありませんでした。ところがOffice365やG Suiteでもひとりあたり数十GBからTBクラスのクラウドストレージを利用することが可能になってきているため、契約次第では組織内で運営しているファイルサーバのデータ量を上回る容量を確保することも可能なので、アクセス速度やセキュリティ面での条件をクリアできればクラウド側に移行することもより現実的になってきています。

システム管理者としてファイルサーバの保守を経験したことがあれば実感したことがあると思いますが、いかに安定稼働していても、ディスククラッシュに対する不安感はいつでも心のどこかに居座っているでしょう。ハードディスクをRAID構成にしたり、バックアップを多重化したり複数の拠点にバックアップの設備を置いたりさまざまな安定性確保策をとったとしても、万が一ディスククラッシュなどが起きた場合のダウンタイムに利用者からの「早くしてくれ」というプレッシャーや、バックアップからのリストアが本当に成功するのだろうかという不安は決してなくなることはありません。また、運用しているシステムは概ね5年前後でリプレースの時期を迎えるため、新しいシステムの構築やデータ移行などについても、スイッチを切り替えるだけで済むような簡単な話ではなく、ここでも心理的負荷がかかります。

もちろんMicrosoftやGoogleに運用を任せれば100%安全という保障はありませんが、自部の技量や運用可能な設備に比べればはるかに信頼できそうだし、運用実績と安定性を考えると自分たちで賄うより信頼度が高いと安心できます。外部化すれば当然それなりの費用は必要になりますが、オンプレミスでファイルサービスを安定的に運用することと比較してみる価値はあると思います。

2018年6月