2018年1月31日

【RPAコンサルタントの日常】

~ピンボケに、たまにはマニュアルフォーカスで~

ピンボケした資料

ピンボケした資料というものがある。もちろん比喩的な表現であって決して文字や図がピンボケしているわけではない。資料は完成され、それ自体に誤りや矛盾はないが、その資料の目的に対してピントが合っていない資料のことを言う。何かを決定するための資料なのか、議論するための補足資料なのか、あるいは誰のための資料なのか、焦点がぼやっとしている資料のことである。

ピンボケ資料の厄介さ

先に述べた通り、資料自体は完成している、情報にも誤りはない、ではいいではないか。と思われるかもしれないが、完成しているが故に厄介な資料である。何が厄介といえば、資料の目的の達成を遠ざけてしまう場合があるからである。例えば、3つの製品のうち、購入を1つに決定する会議があるとする。いざその会議になって資料を見てみると、1つ1つの製品に対して、細かく、長文でその製品の比較情報が書かれている、とする。まず、会議出席者はその情報をすべて頭にいれなければならないという意識が生じる。読み飛ばしては正常な選定ができないとう先入観からである。また、いざ選定の場面で理由付けが難しい。読んでしまった情報を捨てることが難しく、枝葉末節にこだわってしまう。俗にいう木を見て森を見ず、になってしまう。これではかえって資料が目的を阻害してしまうという結果になる。なお、先の例、3つの製品から購入を1つに決めるという例の場合、共通部分を省略して異なる特徴を際立たせる。といった情報の強弱を付けることで、製品の比較をスムーズに行うことができる。

業務プロセスフロー図におけるピンボケ

このピンボケは、業務プロセスフロー図においても発生しうる。完成された正しいフロー図だが資料の目的の達成から遠ざけてしまう、そんな図である。例えば、業務の抜本的な改善を目的にしているのに、細かすぎるフロー図になってしまっていたり(抜本的でない、細かいところに注意がいってしまう!)、新入社員に業務を伝えるためのフロー図なのに、細かいプロセスが描かれていなかったり(質問が多数くるか、うやむやのままになってしまう!)、といった様々なピンボケがある。

では、どうすればいいのかという問いへの回答の前に、「鳥の目、虫の目、魚の目」という言葉について説明する。ビジネスには以下の3つの目が必要らしい。

①鳥の目:マクロ的な全体を掴む視点

②虫の目:ミクロ的な細部を把握する視点

③魚の目:流れ、傾向を視る感覚

だそうで、だれが言ったかしらないが、言われてみればその通りなのである。

鳥の目、虫の目、魚の目でピントを合わせる

これら3つの目は、資料のピンボケを直すことに使える。それぞれがピント調節の基準となるのである。例えば、鳥の目の例を挙げる。

-----------------------------------------

今まで資料を作っていたが、ここで一旦鳥の目になって、資料を眺めてみよう。なるほど、ここの部分はまったく冗長である。今回は部長が出席者であるからにして、このくらいの粒度が適切だなぁ、よし、削ってみよう。

-----------------------------------------

鳥の目、虫の目、魚の目のどこにピント調節するのか、それは資料の目的による。先の業務プロセスフロー図の例に挙げた、抜本的な改善が目的であれば、鳥の目によってフォーカスされた図が必要であろう。新入社員への教育が目的であれば、虫の目が必要かもしれない。そしてフロー図において魚の目、つまり流れの表現は必要不可欠となる。3つの目はそれぞれが極点な視点である。極論によって議論が活発になるように、極端な視点で資料を見ることによって問題点が見えてくる。

「ピント調節はオートフォーカス」の注意点

さて、このピント調節において、注意点がある。それは「オートフォーカス」に気をつけなければならない、ということである。これには2つの意味がある。1つ目の注意点は「オートフォーカスのくるい」である。資料を作っているうちにフォーカスがくるってしまうことである。例えば、業務プロセスフロー図を作るとして、最初は焦点のあたっていた、会議出席者の必要な粒度で作られていたとする。しかしこれが知らぬ間に、特に残業中により細かく記述してしまい、結果として会議を長いものにしてしまった、といったケースである。ちなみにこのオートフォーカスのくるいを防ぐ方法として最も有効なのが、他人に見てもらうことである。(たとえ見てもらえずとも、見てもらった想像をしてみよう。すると冷静になった自分に気が付く)2つ目の注意点は、そもそも資料を作る際に自動的に焦点をあててしまい、その対象が異なっていた場合である。例えば、業務プロセスフロー図を作ってほしいと依頼されたとして、その際にあまり説明を受けなかったとしよう。依頼を受けた側は自分の「業務プロセスフロー図」のイメージにフォーカスする。フォーカスしたイメージがたまたま合っていることもあるだろうが、後で修正しなければならないことが多い。なお、フォーカス対象のズレの予防策は、よくイメージ共有することである。

たまにはマニュアルフォーカスで

オートフォーカスは便利である。特に経験と勘によるオートフォーカスは業務を円滑に進める。しかし、経験が少なく勘も働かないような状況では、マニュアルでピント調節する必要がある。このピント調節作業は、一見回り道に見えるが、後々の手戻りを考えると結果的に近道となる。また、ピントを調節する作業の中で、視点が変わり、新たな発見が生まれることがある。その意味では、経験と勘で楽々と作業できるものであっても、たまにはマニュアルフォーカスを試みるのも面白いかもしれない。

少しくらい非効率でもいいじゃないか。

2018年1月

※ 関連ページ 「当社ヘルプデスクサービスのご案内」