2016年6月13日

【失敗しないシステム導入】

~ベンダの開発実績を評価する際のポイントは?~

ベンダ選定において、ベンダの開発実績を評価することは多いと思います。開発実績の乏しいベンダより、開発実績豊富なベンダの方が、開発ノウハウやスキルが優れており、プロジェクト成功の可能性が高まると考えるのは当然のことです。しかし、ベンダの開発実績を正確に評価することは意外に難しいのです。実績が豊富であると評価してベンダを選定したが、プロジェクトが始まってみるとあまりうまく行かない。よく確認してみると、実際には期待していた実績は持っていなかった。という事例も耳にします。

何故このようなことが起きるのでしょうか。基本的にはベンダの開発実績は、RFIに対する情報提供書、もしくはRFPに対する提案書で情報を得ます。RFI、RFPでどのような情報を提供して欲しいかを具体的に指定しないと、あいまいな情報が提供され、その結果、ベンダの実績を見誤ってしまいます。

ベンダの実績を見誤ってしまう事例としてその対策をご紹介します。

1.ベンダA社の実績に「50社への導入実績あり」とあったが、A社が提案してきたパッケージ製品の導入実績であった(他のベンダの導入実績も含まれていた)

パッケージ製品の評価においては、パッケージ製品自体の導入実績(シェア)も重要ですが、ベンダを評価する際には、“そのベンダが導入した実績”を示してもらわなければなりません。ですので、RFI、RFPで「貴社が導入した実績を提示してください」と明記します。

2.販売システム開発プロジェクトにおいて、ベンダB社の実績に「業界再大手C社への導入実績あり」とあったが、販売システムではなく、グループウェアの導入実績であった。

この事例で言えば、グループウェアの導入実績はまったく参考になりません。“同様のシステムを開発した実績”を示してもらわなければなりません。「販売システムを開発した実績を提示してください」と明記すべきです。

3.中堅製造業でのシステム開発において、ベンダC社の実績に「50社での開発実績あり」とあったが、中小企業での開発実績ばかりであった。さらに製造業での開発実績も少なかった。

企業の規模によって、システム開発プロジェクトの難易度はまったく異なります。また、業種が異なるとシステムの特性も異なります。「当社と同規模、同業種の企業へのシステム開発実績を提示してください」と明記します。

4.ベンダD社の実績に「10社への導入実績あり」とあったが、実際には失敗プロジェクトばかりで、顧客からの評判は悪かった。

紙の上での開発実績は形式的なものとなり、実際に成功しているのか、顧客満足度が高かったかどうかの実態を掴むのは限界があります。実態を掴むためには、ベンダの顧客へ直接インタビューすることが考えられます。

「貴社の顧客のうち、当社から直接インタビューすることが可能な顧客があれば、列挙してください」とRFI、RFPに記載してみましょう。開発の失敗が少なく、高い顧客満足を提供できているベンダであれば、多くの顧客名称がリストアップされてくるはずです。逆に「守秘義務がありますので」などいろいろな理由をつけて、顧客名の提示を拒むベンダであれば、自信を持って紹介できる開発実績がない可能性があります。実際に顧客インタビューを実施するかどうかは別としても、このようにインタビュー可能な顧客を挙げてもらうだけでも開発実績を評価する際の参考になります。

このように、どのような開発実績を提示して欲しいかをRFI、RFPで具体的に指定することで、ベンダの開発実績を正しく評価することができます。

2016年6月