2014年8月25日

【システム企画~情報活用力を上げる仕組み作り】

~戦略の実現とシステムの関係~

前回、よいシステム企画の条件として、2つの点を挙げました。続いて、それぞれの概要を述べ、その後、具体論に入っていきたいと思います。

1. 戦略の実現を助けるものであること

「戦略」という語の指すところについてはさまざまなことがいわれています。シンプルな表現としては、環境作り、ポジション創造、指針や方針、進路等があり、それらをキーワードした定義や説明をみつけることができます。

本稿は戦略そのものを論ずるものではありませんので、先(システム企画)に進むために、「戦略サファリ」(ミンツバーグ、アルストランド、ランベル、1998)のはじめに戦略に関する標準的なテキストにある定義の例として挙げられている「戦略とは、組織のミッションおよび目標に沿って成果を達成するためのトップマネジメントによるプランである」(Wright, P., Pringle, C., and Kroll, M. “Strategic Management Text and Cases”, Needham Heights, MA: Allyn and Bacon, 1992)を、ひとまずは参考としたいと思います。

(注:「戦略サファリ」では続けて、「そんな簡単な定義をするつもりはない」として、その後で戦略の定義として考えられる複数の要素に触れています)

但し、システム企画が企業の戦略実現(戦略目標の達成)を企図して行われるものであるという考えをもってシステム企画について述べていくために、もう少し、戦略について整理しておきます。

経営戦略は、企業戦略(Corporate Strategy)と事業戦略(Business Strategy)に大別されます。企業戦略は、企業(全社)としての戦略(事業ドメインの決定や、事業間の経営資源の配分など企業全体の方向性を示す戦略)、事業戦略は、個々の事業分野の単位で策定される戦略(その事業でどのように優位性を獲得し、利益を上げていくかといったことについての戦略)です。したがって、事業戦略(およびそれに従属する戦術)のレベルでは、事業を成功させるための活動をどのように行うか、すなわち業務が対象となってきます。

ここで「IT」と「IT戦略」が登場してきます。しばしばいわれるように、ITは技術であり、道具として利活用されるものと位置づけられます。IT戦略は、経営戦略や事業戦略の実施状況や成果の測定やそれによる意思決定支援のため、また、事業戦略を実行するための活動・業務を行う際の情報活用のためのどのようなIT(技術・道具)が必要かを考え、投資と利活用を行っていくために策定されるものと考えます。システム企画はこれを受け、さらに具体的に、ITを導入する領域や業務プロセスを決定し、対象となる領域や業務におけるシステム化を行っていくものといえます。

以上、最上位の企業戦略から事業戦略、IT戦略、そしてシステム企画の関係を概観してきました。組織(企業)における意思決定と執行は組織目的を果たすために行われるものですから、情報化・システム企画はそれに適うように企画される必要があります。組織目的を果たすために、組織は経営戦略や事業戦略を立て、実行します。情報化・システム企画は経営状況の把握・評価や、経営戦略に基づく事業戦略を実行するための手段であり、常に戦略の実現(戦略上の目標を達成すること)を目標とします。したがって「戦略の実現を助けるものであること」が、よいシステム企画の条件として忘れてはならない前提ともいうべき大きなものといえます。

2014年8月

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※ 関連コラム 【システム企画~情報活用力を上げる仕組み作り】 「よいシステム企画の2つの条件」 (2014年7月22日)