2016年5月16日

【ITの引っ越し~持っていけば動くわけではありません~】

~足元にご注意!~

昨年サーバルームの環境整備について何回か書いたうち、2015年4月(2015/4/7)に電源供給をテーマにしました。サーバルームについての記事だったため、オフィス内の電源について特に言及しなかったのですが、もちろんオフィス内にもパソコンや複合機、各所に設置するネットワークスイッチなどの電気機器が数多く設置されます。これらの機器がどれぐらい電力を消費するかということも忘れてはいけない点です。配電盤に設けられたブレーカーひとつあたりで供給可能な電力は通常20Aが上限だし、電源供給用に引き回すOAタップも1台あたりの容量は15Aですから、この制約を前提にしてエリアごとに機器を何台置けるのかを頭に入れてレイアウトを行います。

ノートパソコンの一般的なモデルであれば大容量なものでもせいぜい50W程度ですが、デスクトップパソコンの場合、最近は筐体自体が小ぶりで消費電力もあまり大きくないものでも、タワー型でスロットに拡張カードが何枚も入るようなモデルで1台で300Wか500Wぐらいを見込まないといけないものも存在し、またモニタも電力を消費します。これらの各機器の消費電力を把握しておくことで、どの区画にはどの機器が設置され、どのぐらいの電源容量が必要かを把握することが可能になります。フロア内の電源配置自体は特に指定がなければ、室内をマス目に区切ってマス目ごとに均等に割り振ることが一般的ですが、このデータに基づいて部署や機器のレイアウトに従って特定の区画にあらかじめ電源タップを多めに配置するなどの調整が必要になります。

こういったことを頭に入れておかないと、移転作業がひと段落してオフィス内に設置したパソコンその他の機器を一斉に起動した途端にブレーカーが落ちるという結果に至ります。タワー型のデスクトップパソコンやブラウン管モニタを使っていた時代に比べれば、一般ユーザはノート型パソコンを使用することが多くなったので、全体に消費電力が少なくなりました。それでもここは検討事項として忘れてはいけないものです。

パソコンを何台も設置する場合については概ね以上ですが、複合機についても注意が必要です。たいていのオフィスではパソコンの印刷出力先として欠かすことができない機械ですが、それなりに社歴のある会社ではこの機器がIT部門ではなく総務に相当する部門の管轄下にあることが多いでしょう。歴史的にはコピー機(乾式複写機)にファクシミリ機能が追加されて複合機という名称でオフィスに広がった機械です。乾式複写方式を開発したゼロックス社は、この技術を使ってレーザープリンタをコンピュータの出力機器として開発しました。機械的には大して変わらない仕組みを使って紙の上にイメージを焼き付けるわけですから、それじゃプリンタ機能も複合機に搭載すればいいじゃないかという流れで現在の姿になったものです。

複合機の導入を担った部門がそのまま現在の複合機を管轄している場合が多いため、IT機器についての電源に関する議論の中で複合機の存在を忘れてしまっていた事例を経験しています。ここで複合機を落としてしまうと後で大変なことになります。複合機は待機状態ならそれほど電力を必要としませんが、電源投入からシステム起動や、待機状態から印字可能な状態に復帰する際に大容量の電力を消費するからです。複合機のカタログに掲載されている機器仕様で電源の項目を見ると、たいていの場合、AC100V、15A、1.5KW以下としか記されていません。つまり、この1台で1.5KW使うことがありますよということで、これ1台でブレーカーを1系統占有してしまう容量です。同じブレーカーの系統にうっかり複合機や単機能のレーザープリンターを複数繋いでしまって、同じタイミングで電源を投入しようものならブレーカーがあっけなく落ちかねないし、複合機が1台繋がっている系統にパソコンが何台も同居していれば、データ処理を行っている最中のパソコンが巻き添えをくってユーザの悲鳴があがる結果も起こり得る話しです。

もしこのようなことが起きてしまったらレイアウトの変更か電源の引き回しをやり直さなければいけないわけですが、電源ケーブルの引き直しとなるとOAフロアの床を部分的にせよ取り外す作業が必要になります。移転作業がひと段落して什器設置や荷物の開梱が終わった段階でこうなると後戻りはそう簡単ではありませんから、複合機を何台、どこに設置するかについては間違いなく移転計画の初めの段階から頭に入れておく必要があります。

ここまでは会社組織の統制下にある機器なので、筋道だった計画を立てていけば漏れることはないでしょう。しかし、これだけでオフィスの電源設備を計画すると思わぬところで足をすくわれることがあります。それは何かというと、女性が机の下に設置する暖房機器です。空調が整って室温が適温に保たれるようになっているためほとんどの男性にはピンとこない話しですが、足元の冷えが耐え難いために机の下に電気ストーブや電熱ヒーターなどを持ち込んで設置している事例が少なくありません。

暖房機の類ですから冬季の話かと思うと、冷房の効き過ぎだと夏場でも活躍している場合があり、通年で利用されることもあります。アマゾンや楽天などの通販サイトで「デスク、足元、暖房」で検索すると物凄い数がヒットするほどの市場規模です。これらの機器は省電力でも50Wは当たり前、500W前後のもの珍しくありません。これらの機器がオフィスの中、文字通り視界に入らないところにごろごろ転がっている可能性があります。この種の暖房器具が統制の外で設置されていることについての議論はテーマから外れるのでここではしませんが、こういった機器もIT機器と同じ電源系統に存在することを想定に入れて電源容量を検討しておかないと、まったく予想していないところでブレーカーが落ちる危険があることは頭に入れておいたほうがいいでしょう。

2016年5月