2018年9月18日

【ITの引っ越し~持っていけば動くわけではありません~】

~自然災害で考えてみました~

災害レベルと評された酷暑がようやく収まったようですが、気温だけでなく地域によっては台風や地震で甚大な被害を被ったところもありました。被害を被った方々、復旧途上の方々にお見舞い申し上げます。

関西の台風と北海道の地震のどちらでも大規模な停電が発生し、これを書いている時点でもそれぞれの地域でまだ復旧していないところが残っているようです。それぞれの発生原因もさまざまですが、利用者にとっては電気の供給が止まってしまうことには変わりありません。

私たちが携わっているICTの世界は、電源供給があってこそシステムが動作する前提ですべてが組み立てられているので、電源の供給が止まってしまえばその間は手も足も出ない状態になってしまいます。突発的な停電が発生しても、稼働しているシステムに障害が発生しないように、UPSや非常用電源の用意が欠かせないわけですが、UPSは無停電電源装置という名前はついていますが、いきなりの電源断によるシステム停止を回避して穏便にシャットダウンができるような時間的猶予を確保するための容量が大きな電池でしかありません。システムを止めずに長時間の稼働を確保するためには非常用の自家発電設備が必要です。しかし、ライフラインに関わる社会的なインフラ稼働や医療機関、ICT関係であれば通信関係やデータセンターなどでなければ自前でそんな設備を構えているところは、あったとしても極少数でしょう。また、自家発電の場合、燃料で発電機を稼働させますが、稼働時間は備蓄した燃料の量と補給に制限される設備であることを前提にした運用計画を備えておく必要があります。

最近のPCやサーバが動いているハードウェアもOSも以前と比べればいきなり電源断に対する耐性が強くなっていて、かつてであれば電源を入れ直しても起動できなくなる事故に遭遇することは少なくなっていますが、システムの動作に欠かせないファイルが壊れてしまったり、ディスク自体が損傷したために起動不能になったり正常に動作できなくなる可能性はゼロではありません。また、自前で各種サーバを保有して運用する場合、自家発電まで備えた環境はまず期待できないので、不意の電源供給停止に備えたUPSの設置と安全なシャットダウンを行うための設定とテストは欠かせない備えです。

停電と電源についてはこれらの設備で相当な部分まで対応可能でしょうが、設置場所についてもよく考えてなくてはいけないと思わされたのが、浸水や土砂崩れなどへの対応です。中国地方で発生した大規模な洪水や土砂災害の際、被害にあったシステムのハードディスクの被害状況とデータ復旧の可否について一部で話題になりました。水浸しになってしまった場合、PCやサーバ、その他の機器は概ねまともに動かすことは期待できませんが、ハードディスクに保存されたデータは、単純に浸水しただけであればしっかり乾燥させるとデータの取り出しが可能な場合もあったようです。しかし、こういった被害の場合、真水だけが攻めてくるわけではなく、泥水など汚れた水に浸かってしまって記録面の物理的な破損を被ってしまい、いくら費用をかけてもデータの取り出しができないケースが多かったようです。

こういった浸水のリスクを考えると、ハザードマップで床上浸水が想定されるエリアの場合、重要な設備は浸水の可能性の高い地下や1階には置かないほうがよさそうです。(サーバ室の上のフロアにレストランの調理場で、そこの水回りのトラブルで天井から浸水が発生して水浸しになったという事例も知っているので、地上からの高さだけがすべてではありませんが)

こういった災害への備えという意味でも、ここしばらく話題にしてきたクラウドやデータセンターなどへの外部化について、現実的な課題として考えるべきでしょう。

2018年9月