2018年7月30日

【ITの引っ越し~持っていけば動くわけではありません~】

~クラウドを試しに使ってみる~

今回もクラウドの利用についての続きです。前回(2018/6/12)は主にPCのローカルストレージを補完として位置付けられるOffice365やGsuiteが提供するクラウドストレージサービスが本格的に活用可能なものになっていることと、このようなサービスを使ったデータ共有が、企業が運用しているファイルサービスを外部化する可能性について触れました。

マイクロソフトが提供しているAzureやAmazonが提供するAWS、GoogleのGoogle Cloud Platformなど各クラウドベンダは、単体のPCその他のデバイスを対象としたクラウドストレージサービスとは別にクラウド上のストレージサービスをすでに提供しています。それぞれのサービスはそれぞれの特性があり、ファイルサービスとして向かないものもありますが、中にはオンプレミスのファイルサーバを移行できそうな品目も用意されています。

これらのストレージサービスはもちろん有料なので移行するといっても、オンプレミスで自前のバックアップシステムを保有して運用するコストと比較して無理がないか、クラウド側とのネットワークで発生する遅延が許容範囲なのかなど、事前の検討が必要です。リース更新の時期で区切りがいいからと、大規模なシステムをハードウェアもデータも一切合切移行し、それまで稼働していたハードウェアを処分した後に、やはり使いものにならないから元に戻さなければならなくなって、あらためて新規調達と再構築をしなければならない事態は避けたいものです。

移行を検討するのであれば、やはり仮に切り戻しが発生してもダメージがそれほど大きくない領域から手をつけた方が安全でしょう。例えば、オンプレミスでファイルサーバを運用する場合、アクセス権の管理や容量の監視といった業務はもちろんですが、定期的なバックアップとバックアップデータの世代管理や安全な保管など、バックアップに関する仕事にかなりの注意と労力が必要ですが、この領域で試してみるのは手頃かもしれません。

バックアップを保存するメディアとしては、LTOなどのテープ装置や外部ディスク装置を使用することが一般的ですが、いずれのメディアを使用してもそれぞれ保存可能なデータ容量には上限があります。バックアップを実行したりメディアを交換したりするスケジュールを完璧にこなしていても、うっかりするとバックアップするデータの総量がメディアに保存可能な容量を超えてしまい、バックアップに失敗することは、褒められた話ではありませんが、サーバ管理をやったことがあれば誰でも経験しているのではないでしょうか。

バックアップ先のストレージをクラウド側のストレージに移行すれば、メディア自体の管理やバックアップ領域の容量管理に要する管理負荷を軽減できそうです。もちろんクラウド側とのネットワーク接続が十分な速度であることや、ストレージ容量を必要に応じて即座に調整可能なサービスを採用するといった要件を満たすものを選択することが大前提です。

例えば、マイクロソフトが提供しているAzureの場合、そのものずばりのリカバリーサービスが用意されていて、クライアントやサーバにエージェントをインストールすることで、Windowsに標準で用意されているバックアップと同じような運用が可能です。また、Backup ExecやArcserveなどメジャーなバックアップ管理ツールでは標準的な機能としてAzureやAmazon AWSなどのクラウドストレージをバックアップの保存先として選択することが可能になっています。

クラウドを利用したバックアップの運用を通じて、クラウド側とオンプレミスとを接続するWANの運用やクラウド側のサービス・システムの利用方法についてのノウハウを蓄積してみるのは第一歩として悪くない方法だと思います。

2018年7月