2019年10月28日

【失敗しないシステム導入】

~スキルと単価の関係とは?~

システム保守要員などの準委任契約で、単価の異なるSE(システムエンジニア)をベンダから提示されて、その中からSEを選ばなくてはならないという場面があるかと思います。今回のコラムではこのような場面でのポイントについて説明します。

仮に、上級SEであるAさんは1か月で100の仕事を100%の品質で行い、月単価が195万円とします。対して中級SEであるBさんは1か月で70の仕事を70%の品質で行い、月単価が130万円とします。Aさんは1か月で100×100%で100の仕事を完成させることができますが、Bさんは70×70%で49の仕事しか完成できません。残りの30は未着手、70×30%の21は作成したもののレビュ、テストで不具合が判明し、未完成の状態です。

また、Bさんは、リリースしたプログラムの不具合による「データの修正」、「不具合報告書の作成」などの本来、必要のない仕事を増やしてしまいます。こうなるとAさんとBさんの本質的な仕事量の差はさらに広がります。さらにBさんは、打合せや依頼した仕事を忘れることがよくあるので、発注側は都度、確認のメールを送らなければなりません。Aさんでは発生しない「発注側の工数」という余計なコストを支払わなくてはなりません。こうなるとBさんには発注側のコストが発生するので、AさんとBさんの実質的な単価の差は縮まります。

完成させた仕事としては100と49で倍の差があるのに、単価としては195万円と130万円で1.5倍の差しかありません。なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。基本的にはベンダのSEの単価は、SEに支払われる給与に連動します。ベンダがSEに対して、スキルに連動した評価を正確にできていない、もしくは評価に連動した給与が支払えていないということが考えられます。例えば、年功序列による評価、給与などが挙げられます。

発注側としては、短期的にスキルと単価のミスマッチを狙っていくことになります。単価は安くなくても、高いスキルを持ったSEに仕事をお願いしましょう。先ほどの例で言えばAさんです。結果的に安くつくことになります。感覚的なスキルの差以上に、完成する仕事の差は大きくなります。仕事のスピードが70で品質が70%の場合には70×70%=49となることを肝に銘じておき、見た目の単価の安さにとらわれないようにしましょう。

長期的なシステム業界の視点で考えれば、スキルと単価のミスマッチは解消されるべきと考えます。高いスキルを持った若いSEが、見合った給与を得られずに他の業界に移っていくようであれば、システム業界に未来はありません。発注側としてはスキルに見合った単価でお支払いする。また、スキルに相応しくない高い単価になっていれば、惰性で発注せずにきちんとベンダに伝えるといったことが必要になってくると考えます。

2019年10月