2016年11月28日

【RFPコンサルタントの日常】

~ラスト1マイル(RFP作成フェーズ編)~

RFP作成フェーズのラスト1マイル

通信業界で使われる用語としてラスト1マイルという言葉がある。インターネット通信を利用者に提供する最終工程である、利用者の建物とのネットワーク接続を指す。広域なネットワーク敷設は完了し、最終工程である利用者の建物への接続だけが残った状態で、一見すると大方完了しているのだが、残りの利用者への接続の難易度が高いことから、最終工程が大変という意味に転じている。

では、RFP作成フェーズにおけるラスト1マイルとはなんだろうか。それはRFP文書のものの完成ではない。次工程を見据えた準備にある。次工程や次のタスクがスムーズに始められるよう、布石を打っておく必要がある。つい文書の完成に焦点を合わせがちになってしまうが、皆様ご存知の通り、文書の作成や提示は手段である。ある目的のためのシステムとベンダを選定することがRFPの目的である。

次工程へ向けて布石を打っておくことは色々ある。例えば、質疑応答、提案書の体裁および提出、プレゼンテーションの要領を伝えておくことである。ただしこれらはRFPの記述内容に含まれている。では、RFPの記述内容に含まれていない、内部的な工程である「評価」についてはどうだろうか。記述されていないので、あまり考慮されていないのではないだろうか。今回はこの評価(特に提案書評価)について、RFP作成フェーズに打っておく布石をいくつか紹介する。

評価への布石

◆ 評価方法と手順を決めて社内に通知しておく

最低でも評価方法と手順を決めておく。何時、誰が、どの項目を、どのように評価するのか決め、素案を社内で通しておくことがポイントである。

◆評価者に事前に時間を確保してもらう

提案書評価の時間を取ってもらえるよう、評価者と話をしておくことがポイントである。提案書受領とプレゼンの日程が分かれている場合は特に注意が必要で、受領からプレゼンまでの短い期間で集中的に提案書を評価してもらう必要がある。

◆評価の視点から見てRFPに漏れがないか確認する

提案書の評価項目はRFPと正対させる。

これは評価作業が楽になるという効果もあるが、何よりRFPの要求事項をくまなく評価する必要があるからである。極論だが、RFPの要求事項と評価項目が全く異なれば、RFPが無駄になる。評価の観点でRFPに漏れは無いかを確認しなければならないが、正対していればRFP自体が評価項目の基礎となり得るものなので、評価項目自体にさほど頭を使わなくて済む。

◆RFPの要求事項を評価者の視点でチェックする

上記の通りRFPの要求事項と評価項目(軸)は正対させる。よって基本的に要求項目と評価項目はイコールとなる。

この要求事項について、評価者の視点で分かりにくいものがないか確認する。RFPはベンダとのコミュニケーションツールだが、一旦評価するエンドユーザーの視点に立って、項目に分かりにくい所がないか確認する。あれば補足や例示をするなどして対応する。意外ではあるがこの作業を怠った項目について、ベンダから質問を受けたり、誤認識したまま提案がくることがある。

◆評価項目を絞込みやすいかチェックする

評価について、当社では複数人による評価を推奨している。

評価者の役職も社長から現場の方まで様々である。誰にどの評価項目を評価してもらうか定義しておくことが肝心である。業務要求であれば、実際に業務に携わっているエンドユーザーや、技術や運用といった非機能要求であれば、システム部門。といったように対象の評価項目を分ける。基本的なことだが評価者に関係の薄い項目は評価対象外とすることが肝心である。評価自体が難しく、また誤った認識から誤った評価をする可能性がある。よって、エンドユーザー職種や業務範囲によって評価項目を更に絞り込むこともある。対象の評価項目を絞り込みやすいかRFPをチェックするとよい。

最後に

繰り返しになるが、RFP作成フェーズのラスト1マイルは、次工程であるベンダ選定フェーズへ向けて周到な準備をしておくことにある。準備を怠ると手戻りが発生したり、作業量が増えたり、あるいはベンダから良い提案を受けるにあたっての障害となり得る。次工程を見据えて、書き上げたRFPを一旦見直してみてはいかがだろうか。

2016年11月