2021年118

【中小企業のIT投資は社長が仕切れ!】

実際のところ、AI活用は進んでいるのか?


先日、日経クロステックが主催したウェビナーで基調講演をする機会をいただきました。

ウェビナーのメインスピーカー兼スポンサーはNVIDIAと日本ヒューレット・パッカードです。読者の皆さんはヒューレット・パッカード社はよくご存じの会社かと思いますが、NVIDIA社はあまりご存知のない方もおられるかと思います。NVIDIAは米国カルフォルニアに本社を置く半導体メーカーです。半導体の中でも特にグラフィックに特化したGPUに強く、さらにそのGPUをグラフィック以外の汎用計算に利用するための設定でトップの会社です。

筆者は、コロナ禍以前には毎年年初にラスベガスで開催される世界最大のIT系コンベンションであるCESに参加していましたが、NVIDIAはずっと以前からコンベンション会場の一等地に出展する「目立つ」企業でした。展示内容も斬新で、毎年注目していたブースでした。ここ数年の株価上昇もハイパフォーマンスであり、今後本格的に日本でビジネス展開を進めるようなので、覚えておくとよい企業です。NVIDIAが得意とするGPUが汎用計算で最も威力を発揮するのがAIです。AIの複雑かつ膨大な計算には高性能のCPUが求められます。そこで高性能のGPUが活躍するわけです。

さて、話を少し変えます。このウェビナーの告知案内の中に次のような一文がありました。

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流通や製造、医療など、幅広い業種でAI(人工知能)の活用が広がっています。調査レポート「2021年AI予測(日本)」によると、国内のAI導入企業は43%に上り、前年から16ポイント増加、喫緊の課題であるDX(デジタルトランスフォーメーション)実現に向けて、AIがますます不可欠な存在になっていることが分かります。

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この43%という数字を見て、「あれ、AIはこんなに使われているのだろうか?」と少々疑問を感じました。コンサルティングでお客様からお話を伺ったり、あるいは生活で体験する印象と少し違ったからです。AIは目につきにくいところで知らないうちに使われていることも多いので、筆者が気づいていないことも多いのでしょうが、それにしても「ちょっと多くないか?」という感じです。そこで「2021年AI予測(日本)」のサイトを改めて訪れてみると、気がついたことがありました。これはこの調査の対象が以下の条件だったのです。

〚 売上高500億以上でAIを導入済み、または導入検討中の企業の部長職以上315名を対象に調査を実施 〛

これだといわゆる「2:6:2の法則」でいうと、下の2割は調査に入っていない可能性が高くなります。そこで数字を補正してみると43%が34%に下がります。それでも「全社的に広範囲の業務でAIを導入」と「一部の業務でAIを導入」を合わせると34%の会社がAIを既に利用していることになります。これはイノベーター理論で見ると「アーリーマジョリティ」の段階に入っていることになります。つまり、いよいよAIが本格的にビジネスに利用される次期になってきたのです。それゆえNVIDIA社も日本でのビジネスに本格参入してきたのです。

新しい技術は最初ゆっくり静かにきますが、あるタイミングで一気に普及することが多々あります。AIは数年先には日本の多くの場で目にしたり体験したりすることになりそうです。

2021月11月