2019年4月1日

【失敗しないシステム導入】

~システムを全体最適化するために必要なことは? (その1)~

企業には複数のシステムがあります。パッケージシステムもあれば、自社開発をしたシステムもあります。受発注システムのように個別の業務を支援するシステムもあれば、メールシステムのように企業活動全体を支えるインフラに近いシステムもあります。大規模であったり小規模であったり、様々なシステムがあります。これらのシステムは「業務が変わり、システムに合わなくなってきた」、「ハードウェアが老朽化した」、「ベンダのサポートが終了する」などの理由でリプレース、改修が必要になります。理由も様々ですが、そのタイミングも様々です。

個々のシステムの視点だけでシステムのリプレース、改修を検討すると個別最適にはなりますが、企業全体で見ると全体最適にならないリスクがあります。例えば、以下のような例を想像してもらうと理解いただけると思います。

▶AシステムとBシステムはインターフェースが多く、密結合であるにも関わらず、システム再構築を別々に行ったため、新Aシステムと現Bシステム間、新Aシステムと新Bシステム間というようにインターフェースを2度開発することになった。

▶マスタテーブルが散在し、本来不要な二重入力が発生している。

▶システムを改修したが、そのシステムは1年後に入替予定であったため、改修費用が無駄になってしまった。

▶システム部門の人数が少ないにも関わらず、同時期に二つの大規模プロジェクトを平行させてしまい、要員不足のため、一方のプロジェクトは延期することになった。

全体最適の視点で進めるためには、全体のシステムの将来像を表す「全社システムマップ」と、それを実現するためのスケジュールを表す「全社ステムロードマップ」が必要になります。それぞれどのようなものかを説明します。

全社システムマップ

どの業務でどのシステムが利用されているかを表す図です。全体を俯瞰できることが重要ですので、できるだけ1枚にまとめます。システムで扱っている主なデータ、システム間でインターフェースされるデータも記載します。現状と新規のシステムマップをそれぞれ作成します。

現状の「全社システムマップ」を作成することで、重複しているシステム機能、システム化が不十分な業務、不要なインターフェースなどの課題を明確にすることができます。新規の「システムマップ」を作成することで、課題を解決するためにどのようなリプレース、改修が必要なのかを共有することができます。

「全社システムマップ」の補足資料として、「全社システム一覧表」も作成します。システム名、主幹部門、管理データ、他システムインターフェース、開発ベンダ、開発時期、現状の課題などを表形式でまとめます。

全社システムロードマップ

リプレース、改修が予定されているシステムについて、それらのスケジュールを表します。企業合併、法規制対応などシステムの納期に関するマイルストーンがあれば明記します。また、CシステムをリプレースしてからDシステムをリプレースしなければならないといった前後関係があればそれも記載します。

企業合併の決定、法規制変更の延期など前提条件は都度変わっていきます。「全社システムマップ」、「全社システムロードマップ」は都度、見直していく必要があります。例えば、年2回のIT戦略員会で役員に最新版を説明するというように決めておくのも良いでしょう。

次回は「全社システムマップ」と「全社システムロードマップ」の作成方法について説明します。

2019年4月