2019年8月5日
【中小企業のIT投資は社長が仕切れ!】
~中小企業がIT人材を採用できない時代がもうすでに来ている~
システム開発や運用を商売とするITベンダーの経営者や管理職の方々とお会いすると、あいさつの常套句が「人が欲しいけれど、採用できない。どこかにいませんか?」です。仕事の引き合いがあっても、担当するシステムエンジニアやプログラマーがいないので、受託したくてもできない。という悩みなのです。一見贅沢な悩みのように聞こえますが、これは非常に深刻な状況です。ある特定の会社のサービスや商品が人気が高くて売れに売れているから人手が足りない、という状況とは全く異なります。少子高齢化の影響が大きいのはもちろんのこと、システム開発を行うSEという職業が不人気になってきたことも要因です。
それでもIT業界の会社であれば、まだ給料を高額化するとか、マルチワークを認めるなどの方策で優秀なIT人材を獲得することはできるかもしれません。より深刻なのは一般企業、すなわち製造業や流通、サービス業などのユーザー企業です。特にユーザー企業の中でも、中小企業が優秀などころか、そこそこの社内SEやシステム管理者を採用することが日に日に難しくなってきています。
普通に考えて「ITの仕事をしたい」と若者が思った、まずはITベンダーを候補として検討します。だからまずやる気のある人はベンダーに行きます。一般企業の場合は特に新卒などの場合は、社内SEと明示して採用することは稀でしょう。入社後の配属先としてシステム部に行く、というケースが大半と思います。もし、その配属先のシステム部で大活躍をすると、どうなるか?ユーザー企業の社内SEよりもずっと高給のITベンダーへの転職の誘惑が待ち構えています。逆にシステム部が合わなくて、力を発揮できない場合、次の異動を待たずに退職してしまうこともあります。システム要員を失うだけでなく、他の部署なら力を発揮したかもしれない若い人材を失うリスクがあるのです。
中途採用の場合はどうでしょう。ITベンダーから優秀な方を社内SEやシステム管理職に迎えようとした時にネックになるのが、やはり給料の額です。人手不足のIT業界は一般企業よりずっと高給であることは珍しくありません。その高給を払っても迎えたい、というのは中小企業の社長の判断としては立派だと思います。しかし、社長の思いとは別に既存の社員たちは面白くありません。「同じ歳の中途採用のシステムの人がなんで自分の給料よりそんなに高いのか?」となるわけです。この感情は人の根源的な感情であり、その対処は簡単ではありません。下手をすると、会社内に不満のマグマが溜まり、内部分裂するといった大事に発展してしまうかもしれません。
ITの活用なしにはビジネスができない時代に、IT人材が思うように採用できない。この厳しい状況をどう乗り切るか?社長の手腕と決断が問われるのです。
2019年8月