2018年10月29日

【システム企画~情報活用力を上げる仕組み作り】

~問題解決、IT活用の中で必要となる役割③~

コトラーとデ・ペスの「A-Fモデル」は、「イノベーションが起こるプロセス(段階)というものはあるが、プロセスにしたがって順序どおりに進むと考えるのではなく、さまざまな役割を持つ者が協働してプロセスを作っていく」というものでした。これは、組織の活動が従来「プロセスを定めて、それを効率よく実施する」ことを志向して考えられることが多かったところ、コトラーとデ・ペスが多くの企業を調査して、イノベーションにあてられた時間や資金が優れた成果を生んでいる企業では、何か異なることが起こっているのではないかと考えてできたものです。

プロセスと手順を定めて、それに従って仕事を進めることができれば効率は高まり、生産性向上に寄与します。プロセスが見えていない状態で、思考と行動を同時並行的あるいは往復的に行うことは、能力やエネルギーの投入先の分散と切り替えが多く必要となり、どちらか一方を行うよりも負荷が高く、不利になります。プロセスに則った活動がうまくいっている限りは、プロセスに従わないというのは変革というよりも逸脱にあたります。コトラーと・デ・ペスはこのことを「短期的に見てば、変革は企業に成功をもたらさない。むしろ実行性が高く、日々利益をたたき出すルールやルーチン、そしてプロセスこそが、繁栄をもたらすのだ」と表しています。

しかし、環境が変化し、競合他社の数や強さが上がれば、いま効率的なものは効率性を失っていきます。いまうまくいっていることにはいつか限界がくる、あるいは、いまうまくいっているように見えているだけで既に限界がきているということです。ここで改革が必要となりますが、この時には、先にプロセスを置いてそのとおりに行う方法が通用しない、役割でメンバを揃え、プロセスを作っていく方法が適すると考えるものです。再度コトラーとデ・ペスを引くと「この方法がふさわしいと思われる理由は、イノベーション・プロセスはパラメータ化できないからだ。創造性に必要なのは、連続的思考ではなく、類推的思考だ」としています。「パラメータ」という語は、コンピュータ関連用語としては「変数」「設定値」のことですが、より一般的な意味として「何かが行われるときにそれを確定させたり、制限したりする事実要素のセット」というものがあります。

イノベーションは連続的に並んだプロセスを順番に行うことではなく、解体、脱構築、飛躍、跳躍、迂回、往復が求められます。これらのことを繰り返しながら進んでいくこと、異なる能力・特性を持った人たりが役割を果たし、影響を与え合いながら進んでいくということは、イノベーションのプロジェクトに限らず、他のプロジェクトでも当てはまる場面が多くあるといえます。プロジェクト計画を立てる際には、メンバ各人に「何をするのか」とともに「どのように関与するのか」についての期待を伝え、理解を得ておくことが有効だと考えます。

2018年10月

▶関連コラム │ 問題解決、IT活用の中で必要となる役割①(2018/7/23)

問題解決、IT活用の中で必要となる役割②(2018/9/10)