2022年322

【失敗しないシステム導入】

マルチベンダプロジェクトの注意点とは?~


近年、システムの対象範囲が広くなり、ベンダ1社では全範囲をカバーできず、あるサブシステムはA社、別のサブシステムはB社、データ連携部分はC社というように複数ベンダに開発を依頼する、いわゆるマルチベンダプロジェクトが増えています。マルチベンダプロジェクトで注意する点を以下にまとめます。

1. 全体の業務フローを明確にする

個々のサブシステムだけを見て開発を進めていると、いざ統合した時に機能が足りない、重複している、不整合があるといことが起こりかねません。システム設計が正しいかどうかは、個々のサブシステムだけを見ても駄目で、システム全体を見なければなりません。個々の開発ベンダは自社の開発対象範囲については設計の整合性を保証してくれます。しかし、当たり前ではありますが、範囲外は保証してくれません。このため、発注側でサブシステムを横断した全体の業務フローを作成し、サブシステムの設計に不足、重複、不整合がないかを確認する必要があります。

2. データ連携

サブシステム間の連携においては、インターフェーファイル形式を合意し、そのファイル形式でデータを連携することになります。ただし、ファイル形式の合意だけで進めると、いざ統合した時に、データは連携できるものの連携先のシステムで業務上正しい処理ができないということが起こりかねません。具体的には、連携するレコードの範囲が正しくない(不要なレコードまで連携している)、コード値の変換が正しくない(変換したコード値の意味が微妙に違う)などがあります。このためにはファイル形式だけでなく、連携するレコードの範囲(抽出条件)、コード値の対応(場合によってはコード値を新設する)を明確にしておく必要があります。

3. コミュニケーション環境の構築

上述のような視点でサブシステム間の設計をすり合わせていく際には、問合せのやり取りや設計書の更新が頻繁に発生します。ベンダ間でのコミュニケーションをいかにスムーズに進められるかが品質、スピードに大きく影響します。Slack、Microsoft Teams、Chatworkのようなビジネスチャットを導入したり、Box、Google Driveのような共有できるクラウドサービスを導入したりといったコミュニケーション環境を構築する必要があります。

このように、マルチベンダプロジェクトでは発注者がより主体的になってプロジェクトを進めていかなければなりません。そのため、発注者側の体制も通常のプロジェクトよりは厚くしておく必要があります。

2022年3月