2017年12月25日

【ITの引っ越し~持っていけば動くわけではありません~】

~Office365で気をつけておきたいこと~

前回(2017/11/06)、内部のシステムをクラウドに移行する場合に、クラウド側のリソースに対する通信用に今までのインターネット接続回線とは別の経路をこの外部リソース用に検討したほうがいい場合が出てくることについて簡単に書きました。これに加えてエンドユーザーが利用するクライアントパソコンには、必ずといっていいほどインストールされていて利用頻度も高いOfficeアプリケーションにもクラウド化が急激に押し寄せています。Microsoft Officeは意識して調達しない限り、大抵のパソコンにインストールされた状態で設置されます。Microsoft Officeの後ろに2013や2016のように西暦の数字が続く通常のパッケージ版であれば、ライセンス形態が単体売りでもサイトライセンスでも、インストールされたパソコンで動作してファイル読み書きなど限られたタイミングでしかネットワークとの通信は発生しません。

しかし、ここ数年マイクロソフトが力を入れて普及を図っているOffice365の場合は異なります。もちろんWordやExcel、その他のOfficeアプリケーション自体はインストールされたパソコンのメモリ内で動作する個別のアプリケーションソフトですが、ライセンスを確認するために起動時をはじめインターネット側で稼働しているライセンス認証サーバと通信を行います。また、One Driveとの組み合わせでは、デフォルトでファイルをクラウド側に保存するように動作します。ローカルのドキュメントフォルダに保存したつもりでも、One Drive側にある同期フォルダに保存されて複製がローカルに保存されます。

また、クライアント側のメモリ内部で完結する容量の小さいファイルであっても一時ファイルや異常終了に備えた復旧ファイルのデータをクラウド側に置いて、クラウド側と通信しながら動作するようにもなるし、OutlookやSkype、Yammer、Teams等々クラウド側のサーバに蓄積されたデータを参照しながら動作するアプリケーション等がひっきりなしに通信を行うようになります。このため、従来のWEBアクセスやメール送受信、業務システム等との通信を捌いて不足のなかったインターネット接続の帯域がいきなり圧迫されてしまい、ネットワーク通信を利用する様々な動作のレスポンスが軒並み低下してしまい、クライアントパソコンの動作全体が遅く感じるようになってしまう結果を招くことになります。

当社のような小さな事業所では、クライアント数がスマートフォン等パソコン以外の端末を含めてもせいぜい最大30台がいいところですから、確保しているインターネット接続の帯域から見たら大した影響は出ませんが、端末数が数百台といった規模になってくると、1台あたりの通信量がさほど多くなくてもタイミングによっては対外接続の帯域を埋め尽くしてしまうことになります。このような場合、Office365に関する通信を別経路に振り分ける仕掛けが必要になります。外部に向けたゲイトウェイスイッチやルータで振り分けを行いますが、一般的なルータの経路振り分けは接続先のIPアドレスで指定します。しかし、Office365の通信先はURLで公開されており、URLに対応する実際のグローバルアドレスが固定されている保証がないため、接続先のIPアドレスではなくURLによる通信振り分けを行うか、接続元のアプリケーションを識別して振り分ける等の仕組みが必要となります。

このように、Office365を大規模に導入する場合、単なるサービスの導入にとどまらず、通信経路増設の要不要やルータ等ゲイトウェイ機器の増設・交換も合わせた検討が必要になります。

2017年12月