2017年3月27日

【RFPコンサルタントの日常】

~過去のRFP再利用にあたっての誘惑~

前回の調達時のRFPが手元にあれば、利用するのが自然である

例えば、基幹系システムのリプレースを予定しており、手元にはそのシステムを調達した時のRFPがあるとする。この状況ならほぼ全員がその過去のRFPを読み参考にするだろう。また利用できるものは利用してRFP作成にかかる工数を削減したいと考えるはずだ。実際にこういった過去の資料から得られる恩恵は大きいので、利用できる箇所は利用すべきである。

しかし過去のRFPの利用は「流用」と「独断専行」の誘惑がある

当たり前の話だが、「流用」すなわち過去の資料の内容をそのまま考えなしに使うことは基本的にすべきではない。過去のシステムとは目的や状況が異なった場合、実はその要求が不要であったり、目的に沿っていなかったりする可能性がある。業務要求のように細かく量の多いものの場合、ひとつひとつ確認せず「まずコピペしてから考えよう」と「流用」してしまい、結局確認しないまま終わる可能性がある。そして安易に流用した場合、「独断専行」につながる可能性が高い。つまりは関係者に確認せず、まだ合意を取らずに進めてしまうことである。たとえば業務要求について、以前と変わらないだろうという希望的観測から、実際のユーザーに話を聞かずに進めてしまうことがこれにあたる。これら「流用」と「独断専行」の誘惑に負けた場合、過去のRFPのコピーという劣悪なものが出来上がる。タチの悪いことに、このコピーは一見もっともらしく見えるため、社内レビューを通り抜けてしまう可能性がある。

今回は過去のRFPを利活用の勘所をRFPの構成別に紹介する

なおRFPの構成は当社の薦めている、主旨(目的・背景・狙い)、業務要求、技術要求、運用要求、要領と特記事項の順番で紹介する。

>「主旨(目的・背景・狙い)」は利用してはならない

言うまでもなく、過去とは状況が異なっている。たとえ同じ内容のシステムであってもビジネス上の目的、システムに期待することは異なるはずである。ここは独自のものを書き上げたい。結果として過去と同じ主旨となるのは良い。

>「業務要求」は確認のためだけに利用する

前回調達時と比べ多かれ少なかれ業務は変わっている。最初から過去の業務要求をベースに取りまとめようとすると、変更すべき箇所・追記すべき箇所が見いだせない可能性がある。また、不要な業務要求を心理的に捨てられないこともある。現在の業務をベースに上位レベルから検討するべきである。受注伝票画面から考えるのではなく、受注という業務、ひいては販売から考えるべきである。なお、こうして上から検討し網羅した業務要求に対し、最後に漏れがないか過去のRFPを比較してみることは有効である。

>「技術・運用要求」は過去の資料を活用して欲しい

技術・運用要求は、業務要求よりも過去のRFPを活用できる。これら非機能要求は変化が少ない。同系統のシステムの場合、極端な話、コピペして過不足を反映させるだけで充分な場合がある。更に言えば、企業内でどの程度要求するのか、標準を用意しておくとよい。

>「要領と特記事項」といった事務的な事項はできる限り活用して欲しい

これらの事務的な事項はできるだけ過去の資料を利用して、実際の運営に時間を割くべきである。なお、RFPの構成とは異なるが、ベンダーとのQ&A表などRFPの周辺資料のフォーマットも多いに活用すべきである。

過去のRFPはノウハウの結晶で有用な資産である

このように強弱をつけて利用すれば、工数削減などの恩恵は大きい。「流用」「独断専行」の誘惑はあるが、再利用できるところは利用することをお勧めする。

2017年3月