2017年12月11日

【失敗しないシステム導入】

~中堅・中小企業がRPAで効果を出すためには?~

前々回(2017/9/5)、前回(2017/10/23)に引き続きRPAをテーマにお話しします。

今は、RPA導入ブームの真っ只中です。働き方改革のキーワードともマッチし、「出遅れないように、とりあえずはRPAツールを導入してみよう」という感じの会社が多いようです。ただし、このブームが落ち着けば、費用対効果が厳しく問われる局面を迎えると想像しています。

費用対効果を考えるとき、費用としてはRPAツールの費用、ロボットの開発・保守の人件費があげられますが、重要となってくるのは開発・保守の人件費です。業務をロボット化して1人月の業務を削減するために、1人月以上の人件費を掛けてロボットを開発・保守していては意味がありません。

大企業の場合には、ロボット化の対象となる業務が多く、業務ボリュームも大きいので、専門のRPA部隊を抱えていても費用を上回る効果が出ます。常にロボット化の案件があるのでRPA部隊の稼働率も高く、業務ボリュームが大きいのでロボット化の効果も大きくなります。一方で、問題となるのは中堅・中小企業です。ロボット化の対象となる業務は少なく、業務のボリュームも小さいので、専門のRPA部隊を抱えると費用が効果を上回ってしまいます。ロボット化の案件が少ないため、RPA部隊の稼働率は上がらず、業務ボリュームも小さいためロボット化の効果は大きくありません。このような背景から、中堅・中小企業では、専門のRPA部隊を抱えることは難しく、外部ベンダにアウトソーシングする場合がほとんどです。

ただし、ロボットの特徴として、エラーが多いということがあります。通常のシステム化の場合、業務を標準化してからシステム化しますが、RPAツールの場合は、良い悪くも現状の業務のまま、お手軽にロボット化できてしまいます。このため、頻度の少ない例外業務は見過ごされてロボット化され、稼働後、エラーが発生して初めて例外業務に気づきます。ロボット稼働後、毎日エラーが発生している会社もあるようです。

エラー発生時に、社内にRPA部隊がいれば、すぐに対応してもらえますが、外部ベンダにアウトソーシングしていると、外部ベンダへの連絡に手間が掛かる、対応までに時間が掛かるといったことになり、現場の人たちのロボットに対する信頼度は下がってしまいます。中堅・中小企業としては、「RPAの特性を考えると、常に対応してもらえる部隊が社内にいて欲しいが、費用対効果の面からは難しい」という課題を抱えることになります。

この課題を解決するためには、各社に必ずいるサービスデスク(ヘルプデスクとも呼ばれます)のスタッフがRPA部隊も兼ねるということが考えられ、以下のようなメリットがあります。

〇 ロボットのエラーにいつでも対応できる。

〇 現場の業務をよく知っているので、ロボット化の対象業務を適切に判断できる。

〇 サービスデスク業務の余裕のある時にロボットを開発することで、時間を有効活用できる。

サービスデスクのスタッフを派遣している会社の中には、RPAのスキルを持ったスタッフの育成に取り組んでいる会社もあります。ただし、サービスデスクスタッフがRPA部隊も兼ねる場合に気を付けなければならないのは、スタッフ個人の活動とするのではなく、組織的な活動にすることです。スタッフ個人の活動にしてしまうと、そのスタッフ以外には内容の分からないロボットが乱造されます。スタッフが異動・退職してしまうとメンテナンスできず、いわゆる「野良ロボ」が誕生してしまいます。

野良ロボを防ぐには、ITサービスマネージャの存在が重要となってきます。運用管理チーム、オペレーションチーム、サービスデスクチームなどをマネジメントするのがITサービスマネージャの役割ですが、このマネジメントの対象にRPAも含むようにします。ITサービスマネージャがRPAのマネジメント、サービスデスクチームがRPAの開発・保守を担うことで、中堅・中小企業でもRPAで費用対効果を出すことができます。

2017年12月