2015年9月28日

【ITの引っ越し~持っていけば動くわけではありません~】

~バックアップ回線の選択~

サーバルームを設置する際の注意点に関する話題が思いの外長く続いていまいました。今回は久しぶりに通信に関する話題にしましょう。

インターネット接続に限らず外部との通信経路を設ける場合、現在では光ファイバを利用したサービスを採用することが一般的になりました。総務省の統計でもFITHの普及率は全国で42.8%(平成24年9月現在)、東京都で53.2%となっています。山間部や島嶼部を除けば特殊な条件がない限り光ファイバ引き込み自体に困ることは多くないでしょう。

とにかくインターネットにアクセスできればいいのであれば、光ファイバを1回線引き込むだけで仕事が終わりです。しかし、業務内容や拠点の展開状況によっては、複数の回線を引き込むことが必要なことも珍しくないし、万一の通信障害に備えてバックアップの回線を設けることも少なくありません。

アクセス回線が物理的になんらかの事故で切断することもあれば、ファイバなどの回線が引き込まれているキャリアの収容設備側の機器障害など様々なトラブルでサービスが止まることは防ぐことができません。また、キャリア側の保守に伴ってサービスそのものが一定時間停止することもあります。このような通信停止が発生した場合でも外部との接続を極力回避する必要がある場合はバックアップ用として別系統の回線を用意することになります。

バックアップ用の回線として考えられる通信経路としては、

【光ファイバ】 【ADSL】 【ISDN】 【携帯電話網やWiMaxなどの無線通信】 【ケーブルテレビ】 などがあげられます。

【光ファイバ】

メトロイーサなどの専用線タイプを利用している場合にバックアップとしてBフレッツを利用する場合は、収容局の場所がどこなのかは確認しておきましょう。物理的に別の光ファイバを使用していたとしても2つの回線が同一のNTT局舎に収容されている場合、局舎が火災などの障害でサービス停止が発生した場合、共倒れになってどちらもつながらなくなる危険があります。主回線がBフレッツの場合にバックアップにもBフレッツを利用すればやはり共倒れの危険があります。他の回線種別を選択するにしても、プロバイダをメインと異なる業者にしておけば特定のプロバイダのサービスで障害が発生してもバックアップ側で迂回可能なことも期待できます。

【メタル線(ADSL、ISDN)】

光回線のバックアップとして従来利用が多かったのはADSLとISDNでしょう。業務使用を想定したルータにはこのようなケースを考慮して、通常のインターネット接続用のポートとは別にバックアップ回線を想定したポートや拡張スロットを用意しているものが珍しくありません。ただしADSLは2016年6月末で新規申込みの打切りが東西NTTから発表されているし、ISDNについてもNTTが進める公衆回線交換網のIP化に伴い2025年にはサービスの完全停止が予告されています。これらの回線を採用する場合にはサービスが停止されるまでと割り切っておく必要があります。

【無線通信】

このようにADSLやISDNなどメタル線による回線網の将来性が期待できなくなる現状を反映していることもあると思いますが、LTEや3G、WiMAXなどの携帯電話網を利用した無線端末経由でバックアップルートを構築可能なルータも増えています。ただし、公称速度で数十Mbpsを謳うものが多いようですが、電波状態その他の要因によりカタログ通りのスペックで通信できるかどうかは出たとこ勝負でしょう。また、容量制限が設けられてることがほとんどのため、一定限度の通信データ量を超過すると以後はお話にならないような帯域制限がかかるものも多いため、接続断が回避できる程度の性能だと割り切っておいたほうがよさそうです。

【ケーブルテレビ】

ケーブルテレビが提供するインターネット接続サービスもバックアップ用途の候補になりますが、サービス会社によっては固定アドレス提供を行わないところや、ケーブルテレビ網内のプライベートアドレスが発行される場合など業務用途としては制約を受ける可能性があるため個別の確認が必要です。

バックアップ回線に限らず複数の回線を引き込む場合はこのような選択肢の中から目的に合ったものを選択することになります。

2015年9月