2018年8月27日

【RPAコンサルタントの日常】

~きれいはきたない きたないはきれい~

きれいはきたない きたないはきれい

シェイクスピアの戯曲マクベスに登場する3人の魔女のセリフである。美醜は表裏一体という話かと思われるかもしれないが、原文は Fair is Foul, and Foul is fair. である。美醜の含みもあるかもしれないが、魔女としては、正当さは不当で、不当は正しい、ということを言いたいのであろう。

きれいな業務フロー図

あれは何時だったか、きれいな業務フロー図を見たことがある。たしか現状を表したものだった。書き方もお手前にそった、真っ当な業務フロー図であった。見た瞬間、この魔女のセリフが頭をよぎったのを覚えている「きれいはきたない」。というのも現状そのものではなく、作者の理想が図に存分に反映されていると感じたからである。現実はそんな完璧な動きをしてはいないはずだ。しかし図には理想的な動きが記述されており、また、分岐の少ないシンプルな流れとなっていた。何の問題もなく業務ができているように読み取れる。また、図には注釈やコメントといった余計な情報は含まれておらず、本当にきれいな業務フロー図となっていた。

現状業務フローはきたない

このフロー図が現状を少なからず隠匿していたとしたら、当然隠匿した対象は第三者に伝わらない。形式的にフロー図を渡すのであれば支障はないが、何かを解決しようと、または、取り組もうとするのであれば、きたない流れのまま記載すべきであろう。きたなさを包み隠すことは不当である。例えば業務改善を目的に、業務システムをリプレースするとする。問題や課題を隠匿した現状業務フロー図を提示してしまえば、当然ベンダは隠された問題や課題に気づかない。「業務を変えなくても当社のシステムで対応できる」と思うことだろう。すると肝心の業務改善の提案がなされない。または、弱い、方向違いの提案が届くことになるだろう。

きたないことを恐れずに

業務フロー図を描く際、現状そのものではなく、改善したものを描こうとする人がいる。当人も当然「描いたから改善が完了するわけではない」と思っているが、図に取り組んでいる内に改善された流れになってしまうことがある。図に表しにくい複雑なことを省略したりする内に、理想的な、シンプルで分岐の少ない図ができるのである。また、線が交差するなど、図が汚れることを恐れるがあまり、シンプルになることがある。改善が必要なことは、そういった複雑さの中にある。きたないことを恐れずに描ききるべきである。また、フロー図の描き方のお手前にないから、という理由で注釈、コメント、丸囲みなどをしない人がる。フロー図は第三者に現状の問題や課題を分かってもらう、コミュニケーションツールである。よって、注釈、コメントは大いに入れるべきである。そして問題の領域は赤く囲えばよい。課題は詳細に記述すべきである。読み飛ばされない、真意を読み取ってもらうためであれば、大いに紙面を汚すのがきれいな姿だ。

現状業務フロー図を描く際は、理想を捨て、問題と課題の詰まったありのままの業務フローを描いていこう。マクベスの魔女も「きれいはきたない、きたないはきれい」の後、こう言っている。

「霧と汚れの中を飛んでいこう │ Hover through the fog and filthy air.」

この言葉に習って、問題や課題がたっぷりと詰まったきたないフロー図を描いていこう。

2018年8月