2019年7月22日

【システム企画~情報活用力を上げる仕組み作り】

~対立構造の可視化~

意見交換の場では、発散(アイデア出し)と収束(意思決定)が繰り返されますが、その中で意見が対立することがあります。意思決定に向かう過程の中で対立があって当然で、あった方がよいとも言えます。そもそも集団で討議・決定する際には、多様なアイデアを出し合うことが期待されています。また、なんの摩擦もなく下されたり、現れたりする決定より、対立を含む意見交換を経て辿り着く決定の方が、納得感の高い場合が多くあります。

しかし、時間制約のある有限の機会の中で、

「A案は大きな効果が見込めるから実行すべきだ」

「しかし、その実行自体が難しすぎる。他の案にした方がよい」

「B案もよさそうだが・・・」

「いや、B案には相当な投資が必要だ」

「あれがいい」「これが悪い」「○○もしないと意味がないだろう」「現場のことも考えてくれ」

といった発言が飛び交うとき、それぞれの発言の後をそのまま受けて繋げても、応酬や繰り返しになります。そのような時に有効なのが、対立構造の可視化です。

可視化はよく「見える化」と言われますが、ホワイトボードなどに絵図+記号+文字で表して行います。対象はウェブページですが、アイトラッキングを用いた調査では、視線が向いている時間から算出されるテキストコンテンツの読了率は20~28%、ビジュアルコンテンツは80%というものがあります(参照①)。また、3Mのリポートには、視覚情報は文字情報の6万倍の速度で処理可能とります(参照②)。

(参照①:https://www.nngroup.com/articles/how-little-do-users-read/

(参照②:http://3rd-force.org/pubs/meetingguide_pres.pdfhttp://3rd-force.org/pubs/meetingguide_pres.pdf

ビジュアライズされたものは、より多くの注意を惹き、そこから得られた情報はより速く(おそらくは「より強く」と表現できると考えます)処理されるのです。注意を持って見られるため理解度が高まり、発想の量や速度も高まると期待されます。可視化したものを見る際には、まず「誰と誰」ではなく、「何と何」に着目して、その上で背景を知るために「誰と誰」に着目すると考えやすいと思います。

本稿を記すために調べている中で、対立構造を可視化した例として「桃太郎の勢力構造」というものがありました。(参照:https://seikatsusha-ddm.com/article/09950/

手もとに原典がある「竹取物語」を使って同様のことを試みると以下のようになります。物語では、かぐや姫に対して、石作の皇子、庫持の皇子、右大臣阿部御主人、大納言大伴御行、中納言石上麻呂足、帝の6人の貴公子が求婚します。まず「何と何」を見ると、かぐや姫と求婚者たちの間には、

結婚したくない⇔結婚したい

という対立構造があります。

ここで、石作の皇子から中納言石上麻呂足までの5人は、

結婚したくない→結婚してもよい

となる条件(かぐや姫が取ってきてくれと言うものを、取ってきて姫に届ける)に着目し、それを果たそうとして失敗します。

6人目の求婚者として登場する帝が、そのようなことをしたとの明確な記述はありませんが、相手の背景に着目すれば「なぜそんな無理難題を持ちかけるのか、その背景は何だろう」となります。帝はかぐや姫を訪ねた際に、「天上に帰らなくてはならない身だから、地上での結婚はできない。意味が見いだせないし、興味もない」(2文目の内容については、帝が登場するころには変化が表れています)ということを知り、先行者たちが思いつかなかった「帰らなくてよいようにすればよい」というアイデアを得て、そのための行動に出るのです。

2019年7月