2022年7月4日

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コロナ禍にDXが進んでいたJRA


コロナ禍がかなり落ち着いてきました。筆者がそれを実感したのは、競馬です。4月の下旬から6月下旬までの春開催10週間、毎週日曜日に東京競馬場に観戦に行きました。入場人数の制限は継続されていたものの、立ち見ならば入場希望者はほぼ入れたのではないかと思います。筆者は若いころから競馬ファンで、府中にある東京競馬場での開催時は30年以上にわたり日曜日はほぼ毎週行っておりました。それがコロナ禍で無観客開催の時期もあり、ダービーやジャパンカップといった大レースを現場観戦できず、とても残念な思いをしたものです。

JRA日本中央競馬会はコロナ禍において2年前の2020年の東京競馬場の春開催は無観客開催でした。同じ年の東京競馬場の秋開催(10月上旬から11月下旬)に入場人数を大幅に絞って観客を入れての開催を行いました。たしか、4000人くらいに絞っていたと記憶しています。筆者が利用するA指定席は4席を1人の利用でした。G1レースの時など10万人以上入るキャパシティですから、ガラガラな印象でした。

2021年になるとA指定席は2席を1人での利用に変わりました。そして2022年になるとペア席とシングル席に分けるレイアウトになり、4席を3人が利用することになります。ペアは知人同士なので臨席OK、1人申込は知らない人と臨席しないよう、2席を1人利用という形です。変化のあったのは物理的な席だけではありません。指定席の申込・発券とその運用が大きく変わりました。そこにはDXと呼んでいいような改革がありました。

コロナ以前から指定席の申込はWEBサイトでしたが、席が当選すると当日競馬場で申込時に登録したクレジットカードと免許証などの身分証明書を提示して、指定席券を受け取ります。券を受け取ると指定席エリアの「関所」に行きます。そこで手の甲に透明のスタンプを押されます。そのスタンプはブラックライトを当てると見えるで、指定席エリアと一般エリアを行き来する際に、毎回ハンドスタンプをブラックライトにかざして指定席エリアに入るという行為が必要でした。

それが2020年になると大きく変わります。指定席が当選するとスマホにQRコードが発行されます。そのQRコードを競馬場入場口で提示して指定席券とリストバンドを受け取ります。その際にはクレジットカードの提示は不要ですが、身分証明書は必要でした。リストバンドを関所で見せると指定席エリアに入ることができます。ハンドスタンプがなくなったのです。

2021年になると基本的な仕組みは同じですが、指定席券に指名が印刷されるようになりました。身分証明書と印刷された氏名が同じかどうかチェックするのです。

2022年になると身分証明書との照合もなくなりました。指定席の値段も開催レースに合わせて上下するようになります。これは以前からダービーや有馬記念は2000円が4000円と倍になることはあったのですが、今年は土日で値段を変えたり、メインレースの格で変えたりとかなり細かく値段設定されました。また、指定席だけでなくこれまで自由席だったエリアを有料席としてインターネットで売るようになりました。さらに今年の春開催から立ち見の入場のインターネット販売も始めました。この自由席や立ち見のネット販売はいつまで行うのかはわかりません。コロナがさらに落ち着けば以前のように自由席に戻し、立ち見窓口で200円払えば入れるようにするかもしれません。それでもJRAは入場制限や指定席の価格や販売数を細かくコントロールできる仕組みを手に入れたのです。同時に転売防止などの不正対応もデジタルによって各段に進化させています。

無観客や入場制限の中でもインターネットの勝馬投票券(馬券)の売上を大幅に伸ばし、3兆円越えを実現したJRAはDXの成功者といってよいでしょう。

2022月7月