2024年63

【RPAコンサルタントの日常】

~PPAPを「手を変え品を変え」続けている皆様


その昔、メールの添付ファイルにはパスワードをかける風習が日本で生まれました。その風習は脈々と受け継がれ、2020年頃までほぼすべての企業で行われてきました。2020年頃、添付ファイルにパスワードをかけることを「PPAP」と呼び、これをやめるように省庁から広報されました。いわゆる「脱PPAP」です。「PPAP」はこのまま無くなるかと思われましたが、実は粘り強く今も生きています。何かというと多くの企業は「自動PPAP」サービスから、「PPAPまがい」のサービスへ乗り換えしただけなのです。

この「PPAPまがい」のサービスとはどういうものでしょうか。その説明をする前に、まず「自動PPAP」サービスのおさらいをします。このサービスはメールに添付したファイルに自動的にパスワードをかけるサービスです。ユーザーは特段意識することなく、添付ファイルにパスワードをかけ、そのパスワードを別メールで自動送信します。これに対し「PPAPまがい」のサービスは以下のような動きをします。メールに添付したファイルを自動的にクラウドサービスにアップロードし、そのクラウドサービスにアクセスするパスワードを自動送付する。これを聞くと「何が違うの?」と思うかもしれません。まったくもってその通りで、五十歩百歩の世界です。多くの企業がこの「PPAPまがい」に乗り換えたという、日本の不都合な真実があります。まさに手を変え品を変え生き残ったと言えます。

 

そもそも「脱PPAP」の目的は何だったのでしょうか。「セキュリティの強化、暗号化したファイルにウィルスチェックが効かないため」も大きな目的ですが、一番の目的は作業の効率化ではないでしょうか。ZIPファイルにパスワードを入力して解凍し、中のファイルを開く。これだけでも手間ですが、多くの場合この作業に加え、過去に受け取ったファイルなどの整理・管理を都度行わなければなりません。「PPAPまがい」のサービスは上記をただ単にクラウドでやっているだけで手間はほとんど変わっておらず、サービスによってはより時間と手間を要することもあります。

(そして、この手間の多くは主に相手先、つまり送信先で生まれるのです)

 

多数の会社と同じプロジェクトで仕事をした場合、種類の違う「PPAPまがい」のメールの応酬になることがあります。本来の業務に神経を使いたいのに、この限りなく無駄な作業に神経を使ってしまうのです。

 

そこで、今回の提言です。

 

「PPAP」自体日本特有の悪しき風習なのですから、皆さま勇気を出して「PAPまがい」のサービスをきっちりやめましょう。足並みを揃えないと不安になる日本企業ですから、足並みを揃えてやめましょう。そうすれば、日本企業の生産性が上がると思います。DXとかいうより先にこの問題に手を付けてみてください。社員の手間もコストも両方削減できますよ。

 

2024年6月

【小早川豊のコラム】

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