2015年8月18日

【ITの引っ越し~持っていけば動くわけではありません~】

~サーバルームの環境整備 (6) ラックの重量と固定~

複数のサーバを運用するサーバルームにはラックがつきものです。サーバ機にはタワー型とラックマウント型の2種類があります。

場所に余裕があり設置台数が多くても5台ぐらいまでならタワー型を並べることも珍しい光景ではありませんが、小ぶりな製品でも置いただけで300mm×600mm程度の床面積が必要です。ちょうどLPレコードのジャケットを2枚並べたサイズです、ですぐにイメージできるかどうかは世代によるのでしょうが、これ1台なら大した広さではありません。しかし何台も並べばそれだけ床面積を相当占めてしまい、効率的な空間利用には向いていません。これに対し、ラックマウント型であれば、600mm×1000mm程度の床面積のラック内で縦方向に複数台を収容可能ですから効率的に空間を利用することができます。

このようにサーバルームといえばサーバラックがつきものですが、日常的に見かけるのは42Uという、高さが2000mm+α、つまり2m少々の製品です。この中に高さが40mmから50mm弱の1U(ユニット)製品であれば、ぎっしり詰め込んで最大42台を搭載することが可能です。ここで最大42台とは記しましたが、各機器が発する熱量と冷却のことを考えると、適度に1U分の隙間をはさんで余裕を持たせることが多いと思います。

ラック1本あたりの重量を考えてみると、仮に42Uの半分、21U搭載するとして、1Uサーバの重量は20kg前後あるのが普通なので20kg×21台で420kgです。加えてラック単体の重量は150kg前後あるため、合計で570kgになります。だいたい成人男性10人分の重量の塊が据え付けられるわけです。

ところで、最近ではたいていのオフィスビルの床は、ITC対応を前提としてフリーアクセスになっていることがほとんどだと思います。床下に空間を設けて電源やネットワークのケーブルを収容するための上げ底です。この上げ底の構造は建物にとって千差万別なため一概には言えませんが、それぞれに耐荷重が定められており、通常のオフィス用であれば平米あたり300kg程度が一般的です。ラックの設置方法にもよりますが、何も考えずにラックにめいっぱい収容すると、この耐荷重を超過してしまう危険があるので、この点にも注意が必要です。

特に東日本大震災以来、ラックの固定についても関心が高まっています。通常の状態では問題ないとしても、震災クラスの衝撃が加わった際に床の構造が耐えられる範囲であるのかについても検討する必要があります。フロアの構造部分に架台と呼ばれる構造を設置して、その上にラックを固定する方式であればかなりの重量と衝撃に耐えることが期待できます。しかし架台の設置にはコストも時間もかなり必要となるため、床材へのボルト締めや底部の設置面積を拡大するためのスタビライザーを利用することも一般的です。このような架台なしで上げ底の床板の上に置く場合は、床材への固定方法について、水平方向の移動についての考慮はもちろんのこととして、垂直方向にかかる力についても検討が必要です。床材が耐えられずに損傷してしまえば、ラックが床ごと傾いて倒れてしまいます。

繰り返しになりますが、フロアの構造と耐荷重、固定方法について、計画段階でそのビルの設備と構造について把握しているビル管理会社や設備担当の業者さんと念入りな打合せが欠かせません。

2015年8月