20231114

【ITの引っ越し~持っていけば動くわけではありません~】

ブラックボックスとのつきあい

先日、東洋経済オンラインに以下の記事が掲載されていました。

九州工業大の「旧式半導体製造ライン」が再び輝く~30年前導入の「死蔵状態」から人材教育に活路~ 


九州工業大学にあるマイクロ化総合技術センターで30年ほど前に導入した後、あまり活用されずに死蔵状態だった半導体製造装置群を、半導体デバイス制作体験やセミナーなど社会人向けに提供している事例が紹介されていました。

 

国内の半導体関連産業がかつての勢いを失っていることに加えて、各種装置の自動化が進み、半導体製造工程がブラックボックス化してしまい、半導体がどのような工程を経て製品として出来上がっていくのかを実際に目にして経験することが難しくなってしまいました。しかし、センターにある設備を使って自動化以前の工程を実際に経験できる場として提供することで、半導体業界のOJT施設として好評を得て、それまでは設置してあるだけで維持費がかかるだけだった設備が、このサービスを提供により維持費の90%ほどまでを賄えるようになったということです。

ここで紹介されているような設備の自動化によるブラックボックス化はこの事例に限らず、私が携わっているIT関連の領域ではまさに本領が発揮される場です。例えば、PCや各種機器の初期セットアップでは初めて電源を投入すると初期設定を支援するウィザードが起動され、このウィザードに表示される選択肢を指定し必要な値をセットすることで最低限の使用に耐える状態にまで基本設定が済むようになっています。最大公約数的なプリセットの状態でもひとまず使える状態になっていることが当然になっています。確かにこういったツールが便利なことは間違いありませんが、目の前にある機器を使うためであれば、初期起動時の一回限りの使用で通常は使うものではないので、その機器を使える状態にするためには十分なツールです。

 

しかし、ウィザードが想定していない環境や用途以外で使えるようにするためには、こういったツール以外の手順での操作が必要になります。PCが出回り始めた当初は、設定内容を指定する設定ファイルをテキストエディタで記述することは当たり前でした。記述以前にテキストエディタの基本的な操作方法を覚えないと記述自体がおぼつかないということもありました。その後GUIの普及に伴って、コントロールパネルその他の設定ツールが登場し、簡易な設定手順が用意されるようになりましたが、これらのツールが想定していない設定・操作についてはもっと細かい調整が可能なWindowsのレジストリエディタやグループポリシーエディタなどのツールの操作が必要になります。

 

ただし、これらのツールを操作するには自分が行おうとしてることがシステム内部でどういった意味があるのか、どういう影響を与えるのかなどを理解しなければなりません。理解といってもシステムを構成する個々のバードウェアやプログラム自体に手を入れるほどのレベルではなく、これらを取り囲む領域のブラックボックスの薄皮を多少剥がす程度でしかありませんが。

 

2023年11月