2018年7月23日

【システム企画~情報活用力を上げる仕組み作り】

~問題解決、IT活用の中で必要となる役割①~

問題解決とIT活用のプロセス(何が、どのような順番で行われるか)は以下のように整理できます。

ここから、「何が、どのような順番で行われるのか」に続いて、「それを行うためにはどのような人材が必要か」を考える際に、コトラーとデ・ペスの「A-Fモデル」(フィリップ・コトラー、フェルナンド・トリアス・デ・ペス「コトラーのイノベーション・マーケティング」2011年 翔泳社)を使ってみます。この本で提示される考え方は、「イノベーションが起こるプロセス(段階)というものはあるが、プロセスに従って順番どおりに進むと考えるのではなく、さまざまな役割を持つ者が協働してプロセスを作っていく」というもので、「A-Fモデル」は、イノベーションを起こすために必要な6つの役割(6rolls)として挙げられています。

イノベーションは「価値創造のための変革」と訳されますが、IT活用との関係では、以前(2015/08/10)の掲載分に記した「システム企画の対象を検討・選択する際の始動原理は顧客価値創造」ということから、また、ITを活用しての問題解決をプロジェクトとして捉えた際には、上記の「プロセスは予め定まっているわけではない」ということから、「A-Fモデル」が参考になることが多いと考えます。

以下に「A-Fモデル」(前半のA│B│C)に出てくる各役割と、IT活用やシステム企画との関係、コンサルタント等の外部専門家の起用について記してみます。

A:アクティベータ(Activator)

アクティベータはプロセスを開始する人です。関係者に開始時期が(近づいて)来たことを知らせ、関係者の動機づけ、意欲の引き出しを行います。この役割は、恐らくほぼすべての場合において、組織内の者が担う必要があると考えます。プロセスを開始するきっかけは組織外のプレイヤ(顧客、取引先、研究機関、政官界等)からの刺激であることがありますが、自組織での活動開始を宣言し、関係者を動かすことは内部の人間が行った方がはるかに力強く、効果的です。IT活用であれば、システム企画で行う「目的及びシステム化範囲の明確化と共有」が適切に行われ、アクティベータによって開始される活動が「自分たちのプラン」として意識されていることが重要です。

B:ブラウザ(Browser)

ブラウザは情報の収集・整理・分析を行う人です。情報を参照しての意思決定はさまざまな場面で行われますが、システム企画であれば、ブラウザによる情報収集・整理・分析が特に重要となるのは、内外環境の調査においてです。組織内の者が行うか、外部専門家を使うかという観点では、以下のようになると考えます。

内部環境調査:内部の者に時間とスキルがあれば内部でできる

外部環境調査:外注した方が楽な場合がある

C:クリエイタ(Creator)

クリエイタはアイデアを産み出す人、アイデアの実現形態を設計する人です。ブラウザにより獲得・提示される情報の質と量は、現状認識と将来予測、可能性検討とリスク認識等に基づいて行われる創案や意思決定に大きな影響を与えます。IT活用において、クリエイタの力の発揮が特に期待されるのは以下の場面です。

IT適用の対象範囲の決定

対象範囲に適用するITソリューションの選択

いずれの場面でも、候補となる代替案を挙げ、その中から実施に移すものを選択することが行われます。「IT」という部分を含めてこれを行うには、外部専門家の起用が有効であるケースがあると考えます。

「A-Fモデル」の後半(D│E│F)については次回に記します。

2018年7月

▶関連コラム │ 問題解決、IT活用の中で必要となる役割②(2018/9/10)

問題解決、IT活用の中で必要となる役割③(2018/10/29)