2021年816

【中小企業のIT投資は社長が仕切れ!】

オリンピックで垣間見えたDXの浸透、5年後の世界はどうなるか?


賛否両論あった東京オリンピックですが、筆者は楽しんで視聴させてもらいました。やはり世界のトップアスリート、超人たちのパフォーマンスは驚異的で素晴らしかったです。そして、ITコンサルタントの視点で見ると放送や競技の判定にどんどんITが使われていて、DXがスポーツの世界にも浸透してきていることが見て取れました。多くの競技でビデオ判定システムが取り入れられていました。審判がビデオ判定を行うだけでなく、選手側のコーチが求めているいわゆるチャレンジもレスリングなどで実施されていました。また、競泳ではレース中に選手の泳ぐ速度が「14.5k/h」と表示されるなどの新しいデータ活用も面白かったです。

オリンピックだけでなく、野球放送でもDXは進んでいます。特にメジャーリーグの放送は日本の数歩先を行っています。スタットキャストと呼ばれる統合ITシステムを導入しているからです。スタットキャストはボールの軌道をレーダーで追うシステムと人の動きを映像解析で追うシステムを統合させる技術です。これによりピッチャーの投球では球速、回転数、軌道、バッターの打球では打球速度、角度、着弾点などが瞬時に測定することができます。また、大谷選手の練習風景の動画を見たことがあるのですが、ピッチング練習では腕に、バッティング練習ではバットのグリップにセンサーを装着して、様々なデータを取得し、最適なフォームを模索していました。もはやスポーツの世界にITは欠かすことができず、急速にトランスフォーメーションが進んでいます。

「オリンピックやメジャーリーグは世界のトップだから例外で、自分たちには関係ないよ」という意見もあるかと思います。しかし、技術の変革はあっという間に広がり、世界を変えていくことが多々あります。筆者が若いころに読んだ本の中に強く印象に残っているシーンがあります。それはボストンコンサルティンググループ(BCG)の日本代表を長く勤められた堀紘一氏の著作にあった、若かりし頃の堀さんとBCG創設者のブルース・ヘンダーソン氏とのエピソードです。堀さんがヘンダーソン氏の朝の散歩に付き合っていると、松林の前で「君は草むらの中でどれが松の若木で、どれが雑草なのかわかるか?」と問われます。堀さんが「わからない」と答えると「君はバカじゃないのか。わからないのは識別能力がないからだ。じゃあ、君は5年後の世の中がどうなっているかもわからないのか?」とさらにつっこまれたそうです。そしてヘンダーソン氏は「いま起こっている事柄で、5年後に影も形も無かったものがあると思うか?5年後に起こることの芽は実は今出ている。どれが松の芽でどれが雑草か見分けられたら、5年後の世界が見通せる」とおっしゃったそうです。

筆者のような凡人には5年先を読むのはなかなか難しいですが、いま実現している技術や世の中の変化を振り返ると確かに5年間にその萌芽がたくさんあったことには気がつきます。こんな視点でメジャーリーグやこれから行われるパラリンピックを観戦するとまた違った面白さを発見できるでしょう。

2021年8月