2014年11月17日

【ITの引っ越し~持っていけば動くわけではありません~】

~専用線タイプならもっと時間がかかるかもしれません~

オフィス移転に伴う回線の手配についてまだ話が続きます。今回は専用線タイプを利用する場合に意識しておいたほうがいいことについての話題です。

Bフレッツの利用であれば、以前書いたように、最近は軒先まで回線が用意されていることが多く苦労が減りました。しかしフレッツというサービスはご存じの通り、ベストエフォートサービスです。ハイスペックの品目を選んだとしてもベストエフォートであることは変わらず、どのくらいのパフォーマンスが実際に得られるかは使い始めてみないと何とも言えません。

このような不確実さを避け費用をかけても構わないのであれば、メトロイーサ・広域イーサネットなどの名前で各キャリアが提供している専用線タイプのサービスを選択することになります。フレッツ網とは別のインフラで構築されているため仮にフレッツが引込済みで余裕があるとしても、別途引込み工事が必要になります。最近はどのキャリアのサービスでも、ケーブル自体はNTTのダークファイバを利用できるので、ビルの近所までは幹線が敷設済みのことが多いのですが、ビルの中までダークファイバが引込済みで芯線が余っているという幸運な物件はそうそう見つかりません。

ビルの中にケーブルを引込むとなると、以前にも書いた通りまずは道路占有の手続きその他、工事の段取りに時間がかかることを前提にした日程調整が必要です。また工事が必要であれば当然現地調査を行います。ビル自体の都合や、想定される引込経路によっては他のテナントさんの都合も確認が必要です。

さまざまな条件が重なったためにダークファイバの引込み完了までにはなはだしく時間がかかった事例を紹介します。

● 引込み経路は、ビルの脇に立っている電柱から地下の引込み口を経由して地下の機械室まで

● 機械室と引込み口の間には地下部分を含む機械式駐車場と地階のテナントスペースが設置されており、駐車場とテナントスペースの内部空間を通す必要がある

● 引込み経路・工事方法を検討するためには駐車場とテナントスペースを確認する必要がある

● 駐車場内部立ち入り調査を行うためには、その時間帯に駐車場のサービスを休止しなければならない

● 駐車場のサービスを休止するためには、最低1か月前に駐車場利用者に告知しなければならない

● ウィークデイにはテナントへの立ち入りが許されない

● テナントへの立ち入り調査の際には、テナントのどなたかに休日出勤で立会いをお願いしなければならない

これらの条件が判明したのは現地調査で訪問したその場でした。駐車場が引込経路に立ちはだかっていてその場では立ち入れないため、ファイバの引込口と引出口の場所を確認できただけです。この日はキャリア担当者と工事業者さんとの間で「大変なことになりましたね… 」とため息をつくことで終わってしまいました。あらためて日程を調整して1か月半ほど後の休日にやっと立入調査が行えましたが、この結果に基づいた工事を行うためにはもう一度、駐車場を止めていただき、休日出勤をお願いしなければならないので、再び1か月少々待つことになりました。結局工事が済んだのは最初の調査から4か月ほど後、入居数日前でした。

先々、別のテナントさんが利用するかどうかの予測はできないことは当然ですが、将来同じような手間を掛けたくなかったのでしょう、キャリアさんは地下の機械室までの引込みに、ビル全体のテナント全部が利用しても大丈夫なくらいの芯数で、オーバースペック気味のケーブルを用意したようです。

この案件の場合、たまたま半年ほど前から移転計画が持ち上がっていて時間の余裕があったおかげで間に合わせることができましたが、そうでなければ移転直後はかなりの不自由を我慢していただくしかない状況でした。

2014年11月