2015年5月11日

【失敗しないシステム導入】

~要件定義における情報システム部門の役割とは?~

ベンダとユーザの間で行われる要件定義において、情報システム部門の役割とは何でしょうか?

それは、費用対効果の視点で要件をコントロールしていくことです。

ベンダとしては、システム規模が小さくなると売上は下がってしまいます。また、元来モノづくり(システム化)や新しい技術が好きな方がベンダには多いです。このため、シンプルなシステムにするという意識が希薄になりがちです。「なるべく多くの業務を」、「凝った機能で」システム化しようとします。

ユーザの視点では、できるだけ業務をシステム化して、自分の業務を楽にしたいという気持ちが働きます。一方で、要件が大きくなりシステム機能が増えると、システム費用が増えることはあまり理解されていません。システム費用が自分たちのお金であるという意識が薄い場合もあります。

システム機能が複雑になると、それだけユーザテストも大変になるのですが、要件定義工程では、このことはあまり話題になりません。

この結果、費用対効果を無視した要件が膨れ上がります。年に1回しか発生しない、手作業で十分な業務がシステム化されようとします。要件定義工程終了時にベンダが再見積をすると、大幅に予算をオーバしてしまっていて、要件定義をやり直し、もしくは時間切れで深い検討無しにエイヤで要件を切り捨てるということがしばしば起こります。

ベンダ、ユーザともに要件定義工程ではシンプルなシステムにするというインセンティブが働かないため、このようなことが起こります。このような状況においては、情報システム部門が費用対効果の視点で、よりシンプルなシステムにできないか要件をコントロールしていく必要があります。

システム化される機能について、どれくらいの開発費用になりそうか、またどれくらいの効果がありそうかということを常に意識して、要件定義の打合せに臨みます。効果については、どれくらいの頻度で使われるのか、システム化されないとどれくらい困るのか、などから想定します。

費用対効果に疑問のある機能があれば、システム化の概算費用をベンダに算出してもらうとともに、効果をユーザに定量的に出してもらいます。すべての機能について、費用対効果を算出していたのでは、プロジェクトが進みませんので、情報システム部門で費用対効果のあたりをつけ、費用対効果に疑問がある機能について詳細調査を実施します。

これには、費用対効果の“あたり”をつけられるようになることが必要です。常日頃からシステム化の費用対効果を意識することで、このスキルが養われます。システム化の費用対効果整理し、プロジェクトオーナー、現場ユーザとシステム化するかどうかを検討・合意していきます。これにより、費用対効果の高いシステムを作ることができます。

2015年5月