2017年4月24日

【中小企業のIT投資は社長が仕切れ!】

~中小企業は優秀なIT人材の確保が難しい~

筆者がIT業界に新卒として入って丸30年が経過しました。この30年で最大の変化はもちろんインターネットの普及です。インターネットの普及により中小企業のIT環境も大きく進歩しました。そして、中小企業であってもITの活用なしには事業の継続や発展が難しくなってきました。この傾向は今後ますます顕著になることでしょう。それは事業のインフラとしてのIT導入はすでに一回りし、現在から近い将来においては事業の差別化にITが大きな役割を果たすことになります。ビジネスモデルという言葉が頻繁に聞かれますが、新たなビジネスモデルの大半はITの先進的な活用がバックボーンにあります。

「中小企業だから先進的なIT活用など無理。大企業の後追いで十分」と考える中小企業の社長もおられるでしょう。それはあながち間違いとはいえません。しかし、その考えでは大企業の下請けに徹するのであれば事業の継続は可能かもしれませんが、下請け企業に甘んじることなく小さくとも自立して経営をしていくとなると難しいでしょう。経営者の好む言葉に「ナンバーワンよりオンリーワン」がありますが、本当にオンリーワンを目指すのであればITを駆使したユニークなビジネスモデルの構築が必要になります。

ここまで「ITを駆使してオンリーワンを目指そう」という論調で書いてきましたが、現実には大きな障壁が立ちふさがります。それは中小企業はIT人材の確保が年々難しくなってきていることです。冒頭の30年前、ITは人気業種でした。大手ベンダーはどこも大量採用していました。しかし現在はITはあまり人気のある業種ではありません。むしろ3K業種とみられることも多いです。さらに少子高齢化を影響も大きいです。つまりIT業界は人不足の状態であり、今後それがさらに深刻になる可能性が高いのです。

ITベンダーはどこも人の確保に躍起です。優秀な新卒や中途採用者の奪い合いです。だからユーザー側の中小企業が情報システム部門の採用を行っても、欲しい人材を取ることが非常に難しくなっています。従って運用保守をベンダーに委託したり、クラウドサービスのような外部サービスを利用するしかなくなってきているのです。

ひとくちにITと言っても「企画・調達・開発・運用」の4つのフェーズではやる仕事が大きく異なります。このうち開発と運用はベンダーやサービスの活用に頼ってもなんとかなります。しかし、企画と調達はそうはいきません。ここをベンダーに頼るのは財布をベンダーにそっくり渡すことと同じです。特に企画はある意味ビジネスモデルそのものです。だからここはコンサルタントなどの外部リソースを活用したとしても最終的には自社が責任と覚悟をもって決めなければなりません。それができる社員を育成するのは簡単ではありません。むしろ社員を育成するより、社長自らがその役割を果たす方が中小企業においては現実的であると思います。同族会社であれば次期社長の子息にやらせてみて、経営者の資質があるかどうかをみる、というやり方もあります。いずれにしろ優秀なIT人材の確保が難しい中小企業では、企画・調達といったIT上流工程は社長自ら、あるいは経営幹部や候補者など上位者がやるべきなのです。

2017年4月