2018年6月18日

【中小企業のIT投資は社長が仕切れ!】

~社長の「高い高い病」にどう対処するか~

IT調達のコンサルティングを仕事にしていると、いろいろな会社の情報システム部門のマネージャーから同じ悩みを相談されます。

社長に調達案件の説明をすると、毎回必ず「高い、高い。なんでシステムはそんなに高いんだ」と言われます。我々もベンダーの言い値で審査しているわけではなく、きちんと交渉や査定をした見積額なのですが、とにかく社長は「高い」しか言わないのです。筆者の独断と偏見でずばり申し上げると、「高い、高い」を連発する社長の9割はITが苦手です。だから、数字的な根拠があって高いと言っているわけではありません。それでは「社長の戯言」で片づけてしまってよいでしょうか?それも違います。

社長の「高い」はその会社の本業の売上高や利益額、あるいは利益率が念頭にあります。年間売上高が100億円の会社だとします。このクラスの会社だと基幹系システムのパッケージなどのイニシャル導入コストは1億円くらいになることが多々あります。この会社の営業利益率が5%だとすると、1億円の利益を出すには20億円の売り上げが必要になります。つまり1年間の売り上げの1/5がシステム導入費用に当たるわけです。この視点で見るとあながち「高い、高い」を否定できません。ではどうすればよいのでしょうか?

ベンダーの見積額をどう査定したか、複数の視点で説明することです。例えば、4つの視点で査定したケースです。

1. 現行システムは8年前に5000万円で作ったが、維持管理で3000万円の追加を行っている。今回の再構築でさらに機能を増やすのでそれを2000万円と査定。現行機能+新機能で1億円になる。

2. 自社と同規模の他社事例を調べたら8000万円~1億2000万円の事例が多かった。

3. ベンダーと関係のないコンサルタントに概算見積を計算してもらったら1億円前後との回答であった。

4. 今回は4社のコンペから選定したが、その4社はすべて1億円~1億5000万円の範囲であり、選んだベンダーの見積もりが突出しているわけではない。

もしこの4つの視点から説明でも社長が高いと思ったら、社長は自ら別の検討すべき視点を情報システム部門に提示するべきです。あるいはなぜ4つの視点が一致しても納得できないか、論理的に説明すべきでしょう。それができなければ、社長の「ビビり」でしかありません。あるいは社長が経営者仲間の他の社長に「おたくのシステム費用はどんなですか?」と自分でリサーチしましょう。多くの経営者がIT費用で悩んでいることもわかりますし、また思い切ったIT投資をした会社が成功したか、それとも失敗したかを知ることも経営者として必要な情報です。

2018年6月