2018年12月17日

【システム企画~情報活用力を上げる仕組み作り】

~業界知識の有効性~

2018年2月13日(2018/2/13)、同4月9日(2018/4/9)掲載分で以下を述べました。

「コンサルタントの強みは対象分野の関する専門知識、問題解決手法、第三者性を持っていることである」

「企業や団体等がコンサルタントを雇うのは、コンサルタントがそれらを発揮して、コンサルティング費用(金銭的代償)より多くの成果を得られると期待できる場合である」

この中で最初に出てくる「対象分野に関する専門知識」は、多くの場合、業界知識、業務知識ということになりますが、依頼の相談や案件の紹介をいただく際に「同業種の経験はあるか」「業界知識はあるか」ということを訊かれることがあります。

これは以下のことから当然のことだと考えます。

①ある業界で他社と競争している特定の企業が競争優位の獲得のために必要とする解は、抽象度の高い一般解ではなく、その企業に適合する特殊解である。したがって、業界とその企業についての知識は問題解決のために必須である。

②業界知識があると、用語の文脈がわかるため、顧客がそれを説明するのにかかる時間と手間が少なくてすむため、上記掲載回(2018/2/13)に「代償」と表現した、時間・手間・費用といったものが抑制される。

しかし、コンサルタントとしては業界知識を持っていたとしても、それだけでは顧客に適合する特殊解を得るためには足りません。特殊を認識するためには、一般を知り、それとの差異がわかっていることが必要です。一般とは、個別を要素とする集合について共通して認められる事象や性質なので、一般をよく知るためには、多くの個別を知っている方が有利です。個別を多く知っていると、一般の精度が上がり、いま探している特殊に結びつく可能性がある個別を持っている可能性も高まるので、仮説を立てやすくなります。そのうえで、企業の競争優位獲得について考えるときには、仮説も特殊解の一つではないので、それらの中で最も確からしいものを選択していく必要があります。

これは平たく言えば、以下のようなことになります。

a) いろいろなところでいろいろなものをみてきている・・・「いろいろなところに」に「同業他社」が含まれていると②が成立するが、含まれていなくてもよい

b) いろいろなものから確からしいものを選び出す

そして、これらのことのレベルを上げるためには、相当の時間がかかります。池田清彦「科学はどこまでいくのか」(2006年 筑摩書房)では、科学史を考察する記述の中で「(まったくなんの知識も、なんの仮説ももっていない状況においては)単純枚挙以外の帰納はあり得るのか。答えははっきり否である」ということが言われています。帰納(一般化)を行うためには、個別の事例を一つずつ知っていくこと、適合する特殊を選択するために推論と実務経験を重ねることが必要で、時間がかかります。これに比べて、業界知識、比較的短期間の学習で習得できたり、都度、調べたりしやすいと考えられ、もし仕事が始まる初期段階で、コンサルタントが知識を持っていないときは、そうしなければなりません。

顧客は当然に詳しい業界知識を持っていますが、それだけでは競争相手を超えることが難しいと感じたときに、顧客にとってより少ない代償でそれを助けるために、コンサルタントは業界知識を持っていた方が有利です。そしてそれ以上に「a」「b」ができることが重要であり、顧客からはこれを前提として、業界経験・知識の有無が問われていることになります。

2018年12月