2016年8月29日

【RFPコンサルタントの日常】

~システムの費用についての記述~

前回(2016/7/19)パッケージソフトの裸の価格について述べた。今回はパッケージにかかわらず、システム・ソフトウェアの費用について記述する。

システム・ソフトウェアの費用計上

会計上、システム・ソフトウェア(以下システム)はどのように計上されるのだろうか。皆様にとってはおさらいとなるだろうが、システムとその直接的な導入費用は無形固定資産として計上され、定められた期間、つまり現在の法令上の基準では耐用年数5年の定額法で償却され費用化する。システムが開発費込みで1億2000万円であった場合、年2400万円、月換算200万円ずつ費用として償却される。

なお、ユーザー教育など直接的でない導入費用は資産計上の対象となるか議論が分かれるが、最終的には費用となる。一般的に、これらの費用は一般管理費、ないし販売システムなどの場合は販売費に区分けさる。そして、上記は固定費として捉えられる。

固定費

固定費とは何か。極論を言えば損益分岐点を上げるものである。そして経営安全率を下げるものである。

※ 経営安全率:売上高減少に耐えられる割合。経常利益÷限界利益×100

※ 限界利益 :売上高-変動費

※ 経常利益 :限界利益-固定費

1億2000万円のシステムは、月の損益分岐点を200万円上げる。つまりは以後5年間、単品の限界利益1000円の商品を2000個追加で売り続ける必要がある。と言えばネガティブに聞こえるが、逆利用すれば、損益分岐点の上昇や経営安全率の下降をどこまで許容するかを検討することで、システムに掛ける予算の参考にすることができる。

固定費とは付加価値を生み出す源泉である

とにかく悪者にされがちな固定費だが、今では付加価値を生み出す源泉という捉え方が一般的になりつつある。例えばホテルのコーヒーが1000円するのは、設備費用や人件費といった固定費のためであり、その固定費がリラックスできる設備やサービスの行き届いた従業員を生み出している。その付加価値に満足して我々は1000円を支払うのである。システムの付加価値は導入に至った目的を叶えたり、増幅させることにある。「需要予測と在庫管理による欠品をゼロにすること」という目的であれば、顧客目線の付加価値で言えば「行けば必ず買えるという安心感」を与えることになる。その安心感を与えるために、人がシステムから導き出された需要予測値とにらめっこするわけである。

なお、蛇足になるが、システムの導入に関して数値目標を設定することが望ましい。先ほどの需要予測の例で言えば、「機会損失を防ぐことにより5%の売上増が見込まれ、その利益が月100万円である」といったことである。これはシステムが付加価値を超えて一つの目標では導入費用が賄えないかもしれないが、複数、あるいは金銭的ではない目標と組み合わせることで、統合的にシステムの効果を評価できる。

後記

システムは意訳すると「仕組み」である。その仕組みにほとんどの企業がお金を払っている。仕組みは無形であるが故に目的がなければ価値を見出すことが難しい。目的に寄り添うことで初めて形になる。システムの費用とは何か。それは企業という見えない意識の集合体をなんとか形付けるための活動費用である。

2016年8月