2017年6月19日

【中小企業のIT投資は社長が仕切れ!】

~勤勉な中小企業の社長が陥りやすい、行き過ぎた自前主義~

筆者は中小企業の異業種交流の団体の理事を務めているので、20年くらい前から全国の様々な業種の中小企業の社長とのお付き合いがあります。異業種交流のリーダーとなって、各種会合に参加する中小企業の社長というのは個性的でバイタリティーのある方が多いです。その個性も様々で、剛腕カリスマ型もいれば、頑固一徹職人型もいます。本業は社員に任せて(任せていても、会社の経営はきちんと回っています)、地元の地域活動の大立者になっている社長もいらっしゃいます。そのような個性的な社長達なので、ITに関する取り組みも様々ですが、ある類型をみることがしばしばあります。今回はその1つの例を紹介しましょう。

ある分野に特化した製造業で、その分野の技術は非常に高く、社長を筆頭に職人気質の高い会社に見られる特徴です。職人頭のような社長は自前主義が強く、なんでも社員にやらせたがるタイプが少なからずいます。社員もそれに慣れているために、たいていの事はやってしまうのです。ITにしてもしかり。パソコンの設定やネットワークの敷設など当たり前で、社内で使う業務用のプログラムなども基本的に社員が本業の片手間に組んでしまうことも珍しくはありません。

「ウチは社員がプログラムでもなんでもできちゃうので、ベンダーさんは不要!カネがかからないんですわ!がっはっは!」と自慢げに語る社長さんに何人もお会いしました。そのうち何社かを訪問させていただき、実際の現場を拝見させてもらったことがあります。システムを見せてもらうと、それなりにきちんと稼働しています。社員の方に話をうかがうと「ウチはこれくらい自分達でできますよ」と誇らしげです。しかし、社長のいないところで、深く掘り下げて質問していくといろいろと問題が潜んでいることがすぐにわります。

◎ パソコンのハードもOSも古く、処理速度の問題やウィルスも怖い。

◎ とりあえず業務は出来ているが、これが本当にベターなシステムなのか他を知らないので実はわからない。

◎ 本業の片手間でシステムをやっているが、システムの仕事は業績考課にまったく考慮されていないので、疑問に思う。

◎ 自分がシステムを見ているうちは大丈夫と思うが、もし自分になにかあったらこの会社のシステムはブラックボックスになる。

もちろん、簡単に自分達でできることに高いお金を払ってベンダーにやってもらうのは経費の観点からすればもったいないことです。自分達でやれることはやる、それは悪いことではありません。しかし、経営視点で全体最適を考え、リスクを客観的に評価すべき社長が、目先の小さな経費削減にばかりを気にして、社員にやらせ、それを自慢するのはむしろ経営者としていかがなものかと思います。

社長は会社を俯瞰的に見て、自社でやるべきこと、あえて外部を使う事を判断しなければなりません。

2017年6月